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日外会誌. 84(1): 40-50, 1983


原著

下行大動脈・下大静脈遮断による腹部領域選択的冷却法の実験的研究

自治医科大学 消化器外科(指導:森岡恭彦教授)

天目 純生

(昭和57年6月15日受付)

I.内容要旨
肝・膵の拡大切除を可能にするため,雑種成犬で下行大動脈・下大静脈遮断後,補助循環装置による腹部のみの60分間の選択的冷却法の確立を企図した.
雑種成犬6頭を用いて,常温下で下行大動脈・下大静脈を60分間遮断した際の血行動態の変動をSwan-Ganz catheterを用いて調べた.両血管同時遮断は,血行動態上それぞれの単独血管遮断より安定したものであったが,心拍出量は前値の約30%に減少し,上半身の低潅流状態が出現した.このため冷却実験に際しては,腹部に貯留してくる血液を上半身に戻し,上半身の血行動態を安定化することが必要と考えられた.
雑種成犬15頭を用いて,両血管遮断後,補助循環装置による15~20℃,60分間の腹部領域選択的冷却実験をおこなつた.全例で選択的冷却は可能で, 12頭の2週間生存犬を得た.生存犬では肝障害は軽微で一過性であった.
7頭において凝血学的検討をおこなつた.腹部領域選択的冷却中,冷却後に凝固系の活性化と二次線溶の発現がみられたが, self limitingなものであり,比較的速やかに回復した.
9頭を用いた本法による拡大膵切除実験では,腹部が低温循環遮断下にあるため,門脈遮断・切除・再建中の出血とsplanchnic poolingは軽度であった. 5頭の2週間生存犬を得,生存犬では肝・腎障害は軽度で一過性であった.

キーワード
下行大動脈遮断, 下大静脈遮断, 腹部選択的冷却, 疑固・線溶系, 門脈切除


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