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書誌情報]
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日外会誌. 83(10): 1218-1227, 1982
原著
MNNG投与によるラット残胃癌発生に関する実験的研究
I.内容要旨ラットに各種外科的処置を施こし,N-methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)を投与して,残胃癌の発生に関与するいくつかの因子について実験的に検討した.すなわち,ウィスター系雄性ラットの腺胃を1/2切除後Billroth II法, Short Roux-Y吻合法,あるいはLong Roux-Y吻合法により再建し,術後1カ月目よりMNNG 120
μg/ml+0.4% Tween 60を飲料水として6カ月間投与した後,術後9カ月目(発癌剤投与後8カ月目)にラットを屠殺し,癌の発生頻度および発生部位を胃切開単独群あるいは非手術群と比較した.また,各群ともにMNNG非投与ラットを経時的に屠殺して,残胃ならびに正常胃(対照群)の粘膜の変化を観察した.
その結果,胃癌発生率は胃切開群では15.0%,非手術群では9.5%であつたのに対して,Billroth II法再建群では38.9%と最も高く,次いでShort Roux-Y吻合群25.0%,Long Roux-Y吻合群7.1%の順であり,Billroth II法再建群の発癌率はLong Roux-Y吻合群および非手術群のそれに比して,有意(p<0.05)に高かつた.すなわち,十二指腸液の胃内逆流が多いと思われる術式ほど発癌率は高かつた.
残胃粘膜および胃切開部粘膜を組織学的に検索すると,吻合部粘膜は術後1カ月目にはほぼ正常化していたが,術後3カ月目以降になると,びらんまたは萎縮性胃炎が吻合部周辺に観察され, この様な変化は非手術群および胃切開群では少なく,胃切除群の中でもとくにBillroth II法再建群に強くみられた.
また,胃内容pHを測定すると,Billroth II法再建群で最も高く,次いでShort Roux-Y吻合群,Long Roux-Y吻合群であり, これらは対照群に比して有意に高かつた.
以上のことから,残胃癌の発生要因としては,胆汁を含む十二指腸液が持続的に胃内に逆流することが最も重要であり,それによつて吻合部にびらんもしくは萎縮性胃炎が起こり,胃内容のpHの上昇ともあいまつて,残胃に癌腫が発生しやすくなつたものと考えられた.
キーワード
残胃癌, 実験胃癌, MNNG, 胆汁酸
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