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日外会誌. 83(4): 368-377, 1982


原著

2cm以下乳癌の臨床病理学的研究
-とくに縮小手術の適応に関連して-

徳島大学 医学部第2外科教室(主任:井上権治教授)

北村 宗生

(昭和56年12月16日受付)

I.内容要旨
早期の乳癌に対する縮小手術のありかたを検討するために,腫瘤径2cm以下の乳癌60例の多数切片標本を作製し,病理組織学的に局所の癌進展状態の検索をおこなつた.
1)皮膚固定所見や大胸筋固定所見がなくても,皮膚または大胸筋に非常に近接して癌の乳管内進展が認められたものが4例みられた.
2)腫瘤が乳頭に近ずくほど,広い癌の拡がりを示す症例の頻度が高くなる傾向がみられ,また腫瘤占居部位が乳輪下部に及んでいない例でも,乳頭内乳管に癌進展がみられたものが5例(非浸潤癌2例,浸潤癌3例)あつた.
3)浸潤癌では腫瘤径が1cm以下であつても,腫瘤外縁より2.6cm以上におよぶ広い癌の拡がりを示したものが9.4%にみられ,また18.5%に腋窩リンパ節転移がみられた.
4)これらのことより,2cm以下の乳癌でも手術により癌遺残をなくすためには,単純乳房切断術+腋窩郭清以上の侵襲が必要であると思われた.

キーワード
小(2cm以下)乳癌, 乳癌の縮小手術, 乳癌の局所進展


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