日外会誌. 83(1): 27-37, 1982
原著
がん患者免疫能に関する研究
第1編 がん患者末梢血単球の同種培養腫瘍細胞に対する細胞増殖抑制能の検討
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広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2（外科）部門（指導：服部孝雄教授） 柳川 悦朗 (昭和56年8月30日受付) |
がん患者の免疫病態を把握するために，がん患者と同一臓器由来の同種培養腫瘍細胞に対する末梢血単球のcytostatic活性を宿主の腫瘍に向けられた免疫反応としてとらえ，肺がん患者，胃がん患者，乳がん患者を対象として検討した．末梢血単球のcytostatic活性は用いられた標的細胞によつてその感受性が異なるが，がん腫の組織型の違いによるcytostatic活性の差異は認められなかった．肺がん患者，胃がん患者，乳がん患者の肺がん細胞，胃がん細胞，乳がん細胞それぞれに対する末梢血単球のcytostatic活性は健康正常人，良性疾患々者，その他の悪性疾患々者の活性と比較して抑制も増強もされていなかった．またがん患者病期の進行と単球のcytostatic活性とは関連性がなく，腫瘍量もcytostatic活性に影響をおよぼさなかった．しかも肺がん患者において従来の治療法である手術，放射線療法，化学療法などの抗がん療法は末梢血単球のcytostatic活性を抑制することもなくまた逆に増強させることもなかった．しかし4カ月以上にわたるMycobacterium bovis BCG cell-wall skeleton投与の非特異的免疫療法では，肺がん患者末梢血単球のcytostatic活性が増強されることはなかったが，Nocardia rubra cell-wall skeletonを4カ月以上投与するとそのcytostatic活性は有意に増強された．以上の結果からがん患者末梢血単球のcytostatic活性の測定は，がん患者と健康正常人との免疫能の差異およびがん患者の病期の進行度を評価するためには必ずしも有用とは言い難く，また手術，放射線療法，化学療法によるがん患者免疫能の推移を知る上でも有用なパラメーターとは言い難い．しかし効果的な免疫療法を追求する上では末梢血単球のcytostatic活性の測定は有用なパラメーターに成り得ることが示唆された．
キーワード
ヒト悪性腫瘍患者, 末梢血単球, cytostatic活性, BCG cell-wall skeleton, Nocardia rubra cell-wall skeleton
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