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日外会誌. 82(12): 1536-1542, 1981


原著

肺癌小腸転移の2手術例

滋質医科大学 第1外科

堀沢 昌弘 , 橋本 敏和 , 塩貝 陽而 , 岡 利一郎 , 恵谷 敏 , 小玉 正智

(昭和56年8月5日受付)

I.内容要旨
肺癌が小腸へ孤立性転移をおこすことは稀であるが,われわれは肺癌の小腸転移により腹部症状をきたした2手術例を経験したので,それらの症例と今迄の手術報告例の文献考察を加え報告する.
症例1は75歳女性で転移巣穿孔による汎発性腹膜炎で発症し,腸切除・ドレナージを施行した. さらに, 5か月後再び穿孔による汎発性腹膜炎をおこしたが,再切除により軽快した.
症例2は65歳男性で転移巣により腸閉塞症を発症し,転移巣を含めた小腸切除により軽快した.
肺癌の遠隔転移は通常,脳,肝,骨,腎,副腎等に多いが,消化管ことに小腸への転移は剖検例にても比較的少なく,生存中に診断,治療が行われたものは極めて稀である.文献上検索しえた手術報告例は, 16例(外国文献にて9例,本邦7例)にすぎない. 自験2症例を含めた18例を検討すると, 術前より肺癌と診断され何らかの治療をうけていたものは8例(44.4%)である.また術前に肺癌の小腸転移と診断されていた症例はない.
開腹理由は下血1例,イレウス4例,汎発性腹膜炎13例である.
術式は,穿孔部閉鎖1例, By-pass造設2例,腸切除端々吻合15例であり,術後30日以内の手術死亡は9例(50%)であつた.
耐術症例9例の内,消息の明らかな7例の術後生存期間は平均20週間で最長は36週間であった.またその内,術後肺原発巣に放射線治療をうけた3例は29週の術後平均生存期間で,放射線治療をうけなかった4例の13.3週に比較し,より長期間生存した.

キーワード
肺癌, 肺癌小腸転移


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