[書誌情報] [全文PDF] (8690KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 82(12): 1516-1527, 1981


原著

小動脈の人工血管移植に関する研究
-各種薬剤の開存率に及ぼす影響-

岐阜大学 医学部第1外科学教室(指導:稲田 潔教授)

星 脩

(昭和56年7月23日受付)

I.内容要旨
四肢末梢の小動脈の再建に使用する人工血管の長期開存率を向上する手段として,血管移植前後に各種薬剤による補助療法を行い,血栓形成抑制の面よりその効果を検討した.
雑種成犬を用い,大腿動脈を約 2cm切除し内径 3mm,長さ 4cmのGore-Tex (fibrille ngth 30μ) を移植し, 2~3カ月間の開存率を薬剤別群に比較,検討した.補助療法として,抗凝固剤(デキストラン硫酸ワーファリン),血小板機能抑制剤(アスピリン,ジピリダモール),免疫抑制剤(アザチオプリン)を用いた.
まず各薬剤別に血小板凝集能,凝固能に及ぼす影響を調べ,血小板機能抑制剤投与では4日間連続投与後にコラーゲン凝集の著明な抑制を認めた.実験を行つた100頭中52頭が2カ月以上生存したが, 移植血管の開存率は術前投与群において良好であつた.すなわち術前より血小板機能抑制剤投与群の開存率は71%,術前より抗凝固剤および血小板機能抑制剤併用投与群では64%であり,いずれもコントロール群と有意の差を認めた(P<0.05).
組織学的検索では,術前より血小板機能抑制剤投与群のgraftの器質化は良好で,仮性内膜は中等度の肥厚を認めた.また術前より抗凝固剤および血小板機能抑制剤併用投与群のgraftの器質化も同様に良好で,仮性内膜の肥厚は軽度であつたが,術前より免疫抑制剤投与群のgraftの器質化は不良で, その内腔には厚い血栓の付着を認めた.
以上の結果より,小口径の人工血管の開存率向上には,術前術後にわたる血小板機能抑制剤の投与 が, もつとも有効との結論をえた.

キーワード
血小板機能, 術前投与, 吻合部血栓, 平滑筋細胞, Pannus


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。