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日外会誌. 82(12): 1492-1503, 1981


原著

術後高カロリー輸液が体蛋白保持および腸管吻合創の治癒過程に与える影響について
-実験的研究-

大阪大学 第1外科(主任:川島康生教授)

宗田 滋夫

(昭和56年7月9日受付)

I.内容要旨
術後の高カロリー輸液が体蛋白代謝・腸管治癒過程に与える影響につきラットを用いて実験的に検討を行なつた.
実験動物(48匹) を飼育用固型飼料(I群)及び蛋白欠乏食(II群) であらかじめ飼育した.実験動物に開腹・回腸吻合術を施行し5%グルコース・電解質液(A群) 及び21 %グルコース・4% アミノ酸・電解質液(B群)の2種の持続輸液を行なつた.
I群:術後6日目における体重の増減率はI-A群ー27±2.1%(M±S.E.)であるに比しI-B 群ー3±2.7%と減少率は少なかった(P< 0.005).又血清総蛋白値はI-A群5.1±0.19g/dl, I -B群5.5士2.20g/dlと有意の差は見られなかつた(P<0.1).累積窒素平衡でみるとI-A群 -1356±337.5mgと負値を示したに比べ, I-B群+157±119.6mgと明確な差を認めた(P< 0.005).吻合部耐圧試験ではI-A群147±10.9mmHgであるに比べ, I-B群184±8.0mmHgと高値を示した(0.05 > P > 0.01).吻合部肉芽の病理組織学的所見でもI-B群の方が肉芽組織の形成は良好であつた.
II群:体重増減率はII-A群ー15±1.7%であるに比し, II-B群+15±2.0%(P<0.005),又 血清総蛋白値はII-A群では4.3±0.17g/dlと術前値より低下したが, II-B群では5.3±0.12g/dl と増加を示した(P<0.005).累積窒素平衡はII-A群ー449±71.7mgと負を示したに比し,II-B 群607±39.6mgと正値を示した(P< 0.005).又吻合部耐圧試験ではII-A群96±5.9mmHgであるに比し, II-B群144±6.1mmHgと明らかな高値を示した(P< 0.005).吻合部の病理組織学的所見でもIl-B群の方が明らかに良好なる治癒を示した.
以上術直後の高カロリー輸液が等張低カロリー輸液に比べ体蛋白保持及び創傷治癒の点で有効であり,更に術前あらかじめ低蛋白状態に保ち,術後等張低カロリー輸液を行なつた場合には悪影響が極めて強く,術後高カロリー輸液はこの場合極めて有効である事を明らかにした.

キーワード
高カロリー輸液, 腸管吻合創治癒, 術後栄養, 実験輸液モデル, 術後蛋白代謝


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