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日外会誌. 82(11): 1295-1306, 1981


原著

悪性腫瘍患者における血清α2グロブリン値の変動に関する研究
-免疫皮膚反応,予後との関連を中心として-

東京都立駒込病院 外科

酒井 忠昭

(昭和56年7月15日受付)

I.内容要旨
悪性腫瘍患者593例,対照とした良性疾患患者104例および健常者179例について,術前の血清α2グロブリン値を測定し,同時に測定した免疫皮膚反応,末梢血T細胞百分率との関連および術前後の血清α2グロブリン値の推移と外科的治療および予後との関連を検討した.
悪性腫瘍患者の術前血清α2グロブリン値と免疫皮膚反応との関連をみると, PPD皮膚反応(r=-0.124,p<0.05),PHA皮膚反応 (r=-0.235,p<0.05)およびDNCB皮膚反応 (χ2= 10.54,p<0.02)との間に,いずれも有意な相関を認め, さらに末梢血T細胞百分率との間に有意な相関を認めた (r=-0.279,p<0.05).
悪性腫瘍患者の血清α2グロブリン値は高値を示したが,食道癌,肺癌では他の悪性腫瘍より高値であり,乳癌では低値であつた.血清α2グロブリン値は胃癌,大腸癌,食道癌,肺癌およびこれら4種の悪性腫瘍の合計でstageの進行にともなつて上昇した.
術前,術後の血清α2グロブリン値を追跡,測定し,その推移をA群 (A-1 ~ 4),B群 (B-1,2) の6型に分類した.それぞれの型は患者の術後経過を反映し,累積生存率は異つており,予後との関連が指摘された.術後血清α2グロブリン値が10%を限界値としてそれ以上に上昇した場合 (A群) には不良な予後が示され, 10%以下に維持された場合には良好な予後が示された.またStage IIIおよびIVの症例について,手術により主腫瘍を切除しえた群と切除できなかつた群,あるいは治癒切除であつた群と非治癒切除に終った群を比較すると,それぞれの術後血清α2グロブリン値の推移に相異がみられ,手術の種類,内容と, この推移に関連が強い成績がえられた.

キーワード
血清α2グロブリン, 血清抑制因子, 免疫皮膚反応


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