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日外会誌. 82(7): 759-772, 1981


原著

AFP産生ラット肝癌に対する抗AFP抗体の影響に関する研究

北海道大学 医学部第1外科(主任:葛西洋一教授)

宇根 良衛

(昭和56年1月28日受付)

I.内容要旨
抗AFP抗体のAFP産生性肝癌に対するin vivoにおける抗腫瘍効果をみるため,3'-Methyl-DABラット肝癌およびAH66肝内移植ラット肝癌を作成した.これに対し抗AFP抗体を腫瘍血管内に投与し,その影響を検索した.使用した抗体は精製ラットAFPで馬を免疫してえられた抗ラットAFP特異抗体で,対照には正常馬γ-Globulinを使用した.DAB肝癌では血中AFP中和量の2~ 5倍量を肝動脈内に比較的選択的に投与し, AH66肝内移植肝癌では中和量の約200倍を肝動脈内および門脈内にoneshot投与し,以下の結論がえられた.
1) 20週問DABを投与して作成した肝癌の血中AFP値は155.2±34.6μg/ml に達し, 抗体投与後少なくとも1週間血中AFP値の低下をみとめ, DAB 15週投与のラットでは5週後も血中AFP値は有意に低値であつた.
2) 組織内AFPは抗体投与群と非投与群との間に有意の差異はなかつた.
3) 組織学的に線維化, 壊死,および脂肪変性等がみられたが抗体投与群に特異的とはいえなかつた.
4) 抗体投与群には,肺,脾,腎にアレルギー反応を思わせる所見はなかつた.
5) 蛍光抗体法で,類似の組織像の部位においてややAFP蛍光の減少傾向をみとめた.
6) DAB肝癌ラットにおいて,生存日数に差異はなかつた.
7) AH 66肝内移植ラット肝癌では,腫瘍体積110mm3以下の腫瘍で抗体投与によりより腫瘍の縮小効果をみとめた.
以上より,抗AFP抗体はDAB肝癌およびAH66肝内移植肝癌に対し血中AFPの低下作用を有し,とくに微小AH66肝内移植肝癌に対しては腫瘍増殖抑制効果を持つと結論された.

キーワード
α-フェトプロテイン(AFP), 抗AFP抗体, DABラット肝癌, AH66ラット腹水肝癌細胞, 腫瘍血管


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