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書誌情報]
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日外会誌. 82(7): 773-780, 1981
原著
肝流入血行遮断による実験的内因性エンドトキシン血症について
I.内容要旨肝障害時にみられる内因性工ンドトキシン血症について,その発生機序,病態そして治療法を明らかにする目的で, ラットの肝流入血行を15分間遮断したのち, Limulus test,補体価CH
50,網内系墨汁貪食能検査,肝および腎皮質のミトコンドリア呼吸能および組織学的変化を検索した.その成績によると,工ンドトキシンは末梢血よりも門脈血中に検出率が高く,腸内細菌叢由来の経門脈的内因性エンドトキシン血症と考えられた.あらかじめ摘脾を行ない網内系機能低下を負荷すると,虚血により障害された肝Kupffer細胞はこれを十分に代償できず,全体としての網内系貪食能は著明に低下した.その結果エンドトキシン血症出現率の増加および補体価の低下傾向が観察された.エンドトキシン血症出現率の高い摘脾群では,肝および腎皮質のミトコンドリア呼吸能は低下し,本症によるエネルギー代謝障害の存在が示唆された.また,摘脾群においては腎糸球体メサンギウム細胞の肥厚およびフィブリン析出が著明であり,本症による腎障害の存在が推定された. さらに興味あることには, Polymyxin Bを投与することによりエンドトキシン血症はある程度抑制されうることが判明した.以上の成績より,肝障害時のエンドトキシン血症は腸管内容を病巣とする一種の日和見感染と考えられ,エンドトキシンに対する腸管粘膜関門の障害ならびに網内系機能不全を原因として出現し, その結果生体に各種障害をもたらすものと推察された.
キーワード
エンドトキシン, 肝虚血, 細網内皮系, ミトコンドリア
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