[書誌情報] [全文PDF] (4839KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 82(5): 461-468, 1981


原著

術前血管造影所見との対比による胃癌のリンパ節転移進展に関する研究

京都府立医科大学 放射線医学教室(主任:村上晃一教授)
京都第2赤十字病院 外科(指導:徳田一部長)

沢井 清司

(昭和55年2月15日受付)

I.内容要旨
研究目的:術前の血管造影所見と切除組織のリンパ節転移状況を対比させる事により,胃癌の栄養動脈とリンパ節転移進展との関係を明らかにしようとした.
対象及び方法:京都第二赤十字病院外科に於て1976年4月より1979年9月までに手術を行なつた胃癌182例の術前に,腹腔動脈造影, 左胃動脈造影及び総肝動脈造影の3種類の動脈造影を連続撮影で行なつた.その結果, 所見の得られた176例(96.7%)の胃癌について, 3種類の動脈造影像を比較検討し, 胃を栄養する6種類の動脈のうち, どの動脈から癌が造影されているかを読影する事により各胃癌の栄養動脈を判定した.そして,176例の胃癌をその栄養動脈によつて, Left side group,Right side group およびBilateral groupの3群に分類し,各群の治癒切除率および組織学的なリンパ節転移進展を比較検討した.
研究結果: 1) Left side group(47例):胃癌が左胃動脈,左胃大網動脈及び短胃動脈のみから,造影されている症例. 治癒切除率は87.2%であった. 治癒切除例(41例)のリンパ節転移はN0.⑦~⑪が比較的高い陽性率を示したが, 全てn2にとどまつていた. このため, Left side group の胃癌に対してはAppleby法が最も根治的な郭清法である.
2) Right side group(88例):胃癌が右胃動脈,右胃大網動脈,及び胃十二指腸動脈のみから造影されている症例.治癒切除率は83.0%であつた. 治癒切除例(73例)のリンパ節転移はNo.⑫~⑮にしばしば転移を認め,n3症例が15.1%を占めた.従つて,Rightside groupの胃癌に対しては,注意深い凡郭清が必要である.
3) Bilateral group(41例):左右両群の動脈から胃癌が造影されている症例.治癒切除率は, 46.3%と低く前記2群との間に有意差(p<0.05)を認めた. また切除し得た症例(19例)も, 広範なリンパ節転移を伴う症例がほとんどを占めNo.⑯の転移率も15.8%であつた.則ちBilateral groupの場合は,治癒切除困難な事が多い.

キーワード
胃癌, 超選択的動脈造影, 胃癌リンパ節転移


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。