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日外会誌. 82(5): 469-482, 1981


原著

閉塞性黄疸における凝固,線溶,補体系の変動
-とくに胆道感染および手術侵襲の影響について-

新潟大学 医学部外科学第1講座(主任:武藤輝一教授)

阿部 要一

(昭和55年9月4日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸66例を対象にして,血液凝固,線溶,補体系の変動について胆道感染や手術侵襲の影響などの面より検索し,出血傾向やショックなど合併症発生との関連性さらにその予防対策とくに播種性血管内凝固の予防および治療に関し検討した.
本症の凝血学的所見は線溶能低下をともなつた凝固亢進状態を示し,補体系は高補体レベルにあった.胆道感染群では非感染群と比べ凝固亢進,補体の活性化にともない活性部分トロンボプラスチン時間,プロトロンビン時間の延長, ヘパプラスチンの低下,アンチトロンビンIII, プラスミノーゲンの減少に有意差があり,重症群でその傾向は強く, 非感染群との間にさらに血小板数,C3,C4 esterase inhibitor (C1INH) の減少,血清補体価 (CH50) の低下に有意差をみとめた.有効な胆道ドレナージ後に凝固,線溶,補体系の異常所見は著しく改善正常化傾向を示したが,胆道ドレナージ操作後においてさえも胆道感染例とくにドレナージ不良例に消化管出血やショックなどの合併症が併発し,その原因として播種性血管内凝固の存在が推定された.胆道ドレナージ操作後,早期にアンチトロンビンIIIの減少と,それに密接に関係する凝固亢進所見がみとめられたことより,合併症の予防対策としてアンチトロビンIII濃縮製剤と少量のヘパリン投与が有用と考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸, 凝血学的所見, 補体, 胆道感染


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