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日外会誌. 82(3): 237-251, 1981


原著

迷走神経切離による胃壁内神経に及ぼす影響の形態学的研究

和歌山県立医科大学 消化器外科学教室(指導:勝見正治教授)

三島 秀雄

(昭和55年8月4日受付)

I.内容要旨
迷走神経切離(迷切)後の胃壁内神経叢や壁内神経に及ぼす影響を明らかにする目的で,ラットの幹迷切を行ない,組織学的,組織化学的並びに電子顕微鏡による微細構造についての検索を試みた.
迷切後の壁内神経叢の神経節細胞やそれらの神経線維には,組織学的検索では特に興味ある所見を得ることは出来なかつた.
迷走神経のacetylcholinesterase (AchE) 活性は, 迷走神経切離端より末梢側の神経線維群では酵素活性が著しく弱くなり, 中枢側では酵素活性の変化は認められない. また壁内神経叢や壁内神経のAchE活性やアミン線維も,迷切による影響は認めがたい.
電子顕微鏡による超微細構造において, 筋層間神経叢の節前線維終末には迷切後2日から変性が観察される.神経終末の変性はジナプス小胞の数の減少や集合塊などのclear typeの変性をきたすものと,神経終末内の電子密度が増加するものとが観察された. これらの変性した神経終末は主に小明小胞(狭義のシナプス小胞)を含む終末(cholinergic terminal と考えられる) において認められるが, 極く稀に大有芯小胞を含む終末(P-type or unknown terminal)の変性も出現した.一方小有芯小胞を含む終末 (aminergic terminal) には迷切による変化は認められない.
迷切による神経節細胞への影響としては,神経節細胞の粗面小胞体の配列に乱れが観察された. これはtransneuronal degenerationを示唆するものと考える.
平滑筋層内の一部の神経終末に変性が認められた.迷走神経の経過は, 変性像によつて示されるごとく神経叢を介するものと,一部は神経叢を介さずに直接平滑筋細胞に終末するものもあることを証明し得たものと考える.

キーワード
迷走神経切離, 胃壁内神経, コリン作動性神経, アミン作動性神経, 超微細構造


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