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日外会誌. 82(3): 230-236, 1981


原著

胃癌症例胃液抽出物質の免疫学的検討

千葉大学 医学部外科学第1(主任:奥井勝二教授)

石神 博昭

(昭和55年7月18日受付)

I.内容要旨
胃癌患者21名,消化性潰瘍患者8名, 健常人8名より早朝空腹時胃内pHを7前後に保ちつつtetragastrin刺激下に胃液を採取し,これらを濾過,遠沈, 透析した後真空乾燥した.このうち胃液採取開始早期に収集した胃癌症例10例,消化性潰瘍症例8例,健常人8例の各群毎のそれぞれの症例より同一蛋白量を取り混合したものを各群の胃液抽出物質とした.これら胃液抽出物質を健常人末梢血リンパ球を用いたPHA,Con A およびSepharose protein A (SpA) によるリンパ球幼若化反応(LP反応)開始時に添加した時の影響を検討した.PHAによるLP反応では胃癌胃液抽出物質を添加した時のstimulation index(S.I.)は健常人または消化性潰瘍胃液抽出物質添加時のS.I. に比べp<0.1にて有意低値を示した.Con A によるLP反応においても同様に胃癌胃液抽出物質添加時のS.I. は消化性潰瘍, 健常人胃液抽出物質添加時のそれに比べp<0.1.p<0.05をもつて有意低値を示した.またSpAによるLP反応に対しても同様の傾向が認められた. さらに上記mitogenによるLP反応に対し,胃癌胃液抽出物質を培養開始直後から72時間迄経時的に添加した時の抑制率のtime courseから考えPHAおよびCon AによるLP反応では培養開始後4時間以内に,またSpA によるLP反応では6時間以内にLP反応の抑制が起こることが明らかとなつた. 次に腫瘤の長径×短径(cm)により切除可能症例19例を10以下,10~20,20以上の3群に分類し, 腫瘤の大きさとLP反応の抑制との関係を検討した所LP反応抑制作用は主に10~20の群に存在することが判つた.以上より胃癌胃液抽出物質にはTおよびB細胞に対する幼若化現象抑制作用があり, この作用は比較的早い時期に発現するものと推定された.

キーワード
胃癌胃液抽出物質, リンパ球幼若化反応, 免疫抑制作用, 免疫能低下


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