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日外会誌. 81(11): 1423-1436, 1980


原著

乳癌関連抗原に対する乳癌患者の白血球遊走阻止試験

聖マリアンナ医科大学 第1外科(指導:渡辺弘教授)

福田 護

(昭和55年1月24日受付)

I.内容要旨
白血球遊走阻止試験を用いて,多種類の乳癌関連抗原に対する乳癌患者の細胞性免疫反応の検索を行なつた.乳癌関連抗原として,人の乳癌組織,人の乳癌培養細胞(MCF-7,CAMA), マウス乳癌ウイルス,赤毛猿の乳癌ウイルス(Mason-Pfizer ウイルス)を使用した. 比較対照抗原として正常乳腺組織,大腸癌組織,正常大腸組織,マウス白血病ウイルスを使用した.比較対照群として良性乳腺腫瘍患者,頭頚部癌患者,正常婦人を検索した.
乳癌患者は自家乳癌組織に対して明らかな陽性反応を示さなかつたが,他家乳癌組織の凍結切片や生食水抽出抗原に対して明らかに陽性の反応を示した. 大腸癌に対しては反応を示さなかつた. MCF-7に対して乳癌患者は陽性の反応を示したが, CAMA に対しては陽性の反応を示さず, 乳癌培養細胞はそれぞれ質的あるいは最的に異なる抗原を有しているものと考えられる.
マウス乳癌ウイルスに対して,乳癌患者は対照群に比して明らかに陽性反応を呈したが, Mason-Pfizerウイルスに対しては明らかな陽性反応の傾向が得られず,マウス白血病ウイルスに対しては反応しなかつた.他家乳癌組織, MCF-7,マウス乳癌ウイルスに対して術前患者と術後患者の間には反応に差がなく,この反応には治療行為は影聾していなかつた.
2種類の乳癌培養細胞と3種類のウイルスに対する乳癌患者の反応から, MCF-7 とマウス乳癌ウイルスに抗原の共通性がみられた. さらに, MCF-7 とマウス乳癌ウイルスを抗原として使用すると75%の乳癌患者が陽性の反応を示した.
これらの結果より,乳癌患者の一部が乳癌関連抗原に感作されている可能性が考えられる.さらにこの結果は,乳癌の免疫学的診断法の可能性を示唆するものと確信する.

キーワード
乳癌関連抗原, 白血球遊走阻止試験, 乳癌培養細胞, マウス乳癌ウイルス, 乳癌患者細胞性免疫


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