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日外会誌. 81(10): 1282-1289, 1980


原著

甲状腺色素リンパ造影法に関する実験的並びに臨床的研究
第I編実験的研究

鳥取大学 医学部第2外科(主任:中村和夫教授*)
*) 現 神戸大学 医学部第2外科教授

尾崎 修武 , 平井 啓介 , 提嶋 正 , 中村 和夫*)

(昭和54年12月24日受付)

I.内容要旨
甲状腺癌に対する頚部廓清術に際してリンパ節を確認する目的で, 色素剤(油性chlorophyll)と造影剤(Lipiodol UF)を用いて甲状腺色素リンパ造影法(Thyroid chromolymphography)を考案した. これを臨床例に応用する前段階として犬を用いた動物実験によりchlorophyll とLipiodol UF の混合比, 注入からX線写真の撮影時間,注入から手術までの時間,および甲状腺やリンパ節にみられる組織学的変化などにつき検索した.
色素造影剤としての油性chlorophyll とLipiodol UFの混合比は, 容量比1対1のときが造影性・染色性ともに優れていた.
甲状腺色素リンパ造影を施行してからX線撮影および手術までの時間は,48~72時間が最も適当であつた.
病理組織学的検索により,色素造影剤が甲状腺に注入された部位には組織の破壊と出血がみられたがこれらは早期に修復され,またリンパ節にもリンパ濾胞の肥大や増生がみられたが,いずれも軽微であり,色素造影剤による刺激作用や毒性はほとんどなかつた.
以上から, 油性chlorophyll とLipiodol UFを用いた甲状腺色素リンパ造影法(Thyroid chromolymphography)は臨床例にも安全に応用され得るものと考えられた.

キーワード
甲状腺色素リンパ造影, Thyroid Chromolymphography, Chlorophyll, Lipiodol UF


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