[書誌情報] [全文PDF] (8204KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 81(10): 1267-1281, 1980


原著

血清Lipoprotein-X(LP-X)に関する研究その生成と臨床的意義

東京医科歯科大学 第2外科学教室(主任:浅野献一教授)

藤幡 敏夫

(昭和55年1月17日受付)

I.内容要旨
近年,胆汁うつ滞性疾患の診断に血清LP-Xの測定が有用であると認められつつある.
今回,著者は次の様な臨床的並びに実験的検索を行ない, LP-Xの測定は胆汁うつ滞症の診断に極めて有力な指標となり得るとの結論に達した.
肝機能障害の認められた797検体について血清LP-Xの検出試験を施行したところ44検体22例に陽性であり,確定診断のついている15例はいずれも胆汁うつ滞性疾患であつた.又,肝胆道系腫瘍による閉塞性黄疸44例の検索では全例LP-X陽性であつた. この44例を含めた75例の肝外胆道閉塞性黄疸患者のうち68例(91%)にLP-X陽性であつた.即ち, 胆汁うつ滞性疾患の診断上LP-Xのfalse positive は無く, false negativeは9%であつた.
雑種成犬に総胆管結紮を施行して72時間以内に血清中LP-Xの出現を認めた. LP-X濃度は急速に上昇し,一定期間の後,肝機能の荒廃と共に減少をはじめ,やがては検出されなくなつた.数日後に実験犬は死亡した.即ち死亡する直前にLP-Xはfalse negative となつた. 肝外胆道閉塞性黄疸息者は,有効なドレナージがなされない場合には同様の経過を辿つた.有効なドレナージがなされ,閉塞性黄疸が軽減する場合にはLP-Xも消失した.
又,雑種成犬にヒト生胆汁を点滴静注したところ,注入開始後30分以内に血清LP-Xを検出した.
以上の事実から,血清LP-Xは胆汁と血清の混合により生成されるもので胆汁うつ滞症の診断にきわめて特異的でかつ鋭敏な指標たりうるものであると考えることができる.

キーワード
LipoproteinX(LP-X), 胆汁うつ滞症(Cholestasis), 閉塞性黄疸, Lecithin-Cholesterol acyltransferase (LCAT)


次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。