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日外会誌. 81(8): 746-755, 1980


原著

幼若期の肝再生と肝ミトコンドリア機能に関する研究

北海道大学 医学部第1外科教室(主任:葛西洋一教授)

品田 佳秀

(昭和54年10月31日受付)

I.内容要旨
肝は再生力の強い臓器であり,肝疾患に対する外科的治療も肝再生を前提として行なわれており,また肝再生能の良否が肝切除の予後に関して重要な問題となる.一般に再生能力は個体の令期の若いほど強いとされており,肝切除の臨床においても小児の肝再生は急速かつ円滑であることが知られているが,その原因については不明な点が多い.これをエネルギー代謝の面から明らかにするため,幼若ラットと成熟ラットの両群に68%肝切除を行い,肝ミトコンドリア機能を中心に両群の差異につき検討を加えた.本実験においても肝再生率は幼若ラットにおいて大であり,肝切除後の肝機能の正常化も幼若ラットにすみやかであった.肝切除後において,肝ミトコンドリアの酸化的リン酸化によるエネルギー産生機能単位を構成するチトクローム系呼吸酸素の増加は,幼若ラットにおいてすみやかであり,肝ミトコンドリアのエネルギー産生効率も幼若ラットに良好に保たれている.また,肝切除前後を通じて体重に対する肝重量が幼若ラットにおいて大であり,単位体重あたりの肝ミトコンドリアによるエネルギー供給能が大きく,肝切除後のエネルギー代謝においては,幼若ラットでは成熟ラットに対し質的にも量的にも優位にあり,これが成長期における急速かつ円滑な肝再生を可能としている要因の1つと考えられる.

キーワード
幼若期肝, 肝再生, 肝ミトコンドリア


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