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日外会誌. 81(8): 736-745, 1980


原著

消化性潰瘍および早期胃癌の胃粘膜および粘膜下組織内リンパ濾胞およびリンパ球の免疫学的研究

大阪医科大学 一般・消化器外科学教室(主任:岡島邦雄教授)

八木 敦夫

(昭和54年10月8日受付)

I.内容要旨
消化性潰瘍と早期胃癌の胃粘膜および粘膜下のリンパ濾胞数およびT cell, B cellのsubpopulationについて両疾患の差異を検討した.
手術時切除された消化性潰瘍50例,ステロイド潰瘍4例, Reactive Lymphoreticulur Hyperplasia 1例,早期胃癌87例(術前制癌剤非投与50例,術前制癌剤投与37例) について,ホルマリン固定, HE標本を用いて,リンパ濾胞数を数え,薬剤投与,腸上皮化生等による影響を検討した.リンパ濾胞数は,消化性潰瘍,早期胃癌の別なく,年齢と共に減少し,ステロイド剤および経静脈的制癌剤の投与例で非投与例に比し減少していた.また,腸上皮化生による影響は認められなかつた.
これらとは別に,手術時切除された消化性潰瘍17例,胃癌16例,慢性胃炎1例の新鮮胃を材料とし,組織切片上の羊およびニワトリ赤血球ロゼット形成試験を用いて組織内T cell, B cellのsubpopulationを検討した.本試験の特異性の検定は,胸腺, リンパ節, 扁桃,脾において検索した. EおよびIgG EAロゼット形成試験は明確な態度を示さずT cellの同定は出来なかつた.IgM EACロゼット形成試験でBリンパ球領域に特異性の高い補体感作羊およびニワトリ赤血球(IgM EAC)の付着を認めた.
この手法を胃に用いて検索すると, リンバ濾胞はIgM EAC ロゼット形成試験陽性でBリンパ球の集簇であると考えられた.濾胞を形成しないリンパ球はIgM EAC ロゼット形成試験は陰性であつた.消化性潰瘍および胃癌組織内に集簇するリンパ球(リンパ濾胞)もIgM EAC ロゼット形成試験は陽性であった.

キーワード
リンパ濾胞, 組織切片上羊赤血球ロゼット形成試験, 非濾胞形成リンパ球


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