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日外会誌. 81(7): 640-653, 1980


原著

肝再生に関する実験的研究
-特にICG Rmaxによる機能的肝再生について-

愛知医科大学 第1外科(指導:山本貞博教授)

小林 勝正

(昭和54年10月24日受付)

I.内容要旨
外科学の最近の進歩は,門脈圧亢進症や代謝病における門脈血流変換手術,肝癌における広汎な肝切除を経て,肝臓の移植をも可能としている.そして,これらの進歩を支えた背景には,肝臓の再生の機構に関するおびただしい研究の成果がある.しかし,肝再生促進因子については, (1) 肝血流量, (2) 門脈性因子の2つを主要の因子として未だ決定的な結論には至つていない.しかも在来の再生因子に関する研究は,形態的な検索が主体であつた.本研究は, ICG Rmax を導入することにより形態及ひ機能の両面より肝再生を検索し,再生促進因子を検討したものである.即ち,雑種成犬を用い40%肝切除犬を対象として, 40%肝切除に加えて,門脈血流の変換,肝内流入遮断,門脈系諸臓器の切除などの負荷手術を加え,術後6週間のICG Rmax の変動,血液生化学, 6週後の肝重量,病理組織学的検索を行なった.その結果,肝血流量は肝再生に最も基本となる量的因子であり,肝内門脈内の血流は遮断されても再生に不利となるが,限度をこえた過量の際も,また不利な条件を形成することが再確認された.又,その際の肝内門脈内に注ぐ血液中の酸素濃度それのみでは肝再生に決定的な役割は果し難い.更に門脈系諸臓器の切除,即ち膵臓,膵臓と十二指腸,十二指腸を剔出した後の肝再生状態の比較検討より,十二指腸由来の,何らかの肝再生促進物質の存在が示唆された.この十二指腸由来の肝再生促進物質については,今後の消化管ホルモンに関する内分泌学の進歩に負うところが大きい.また,本研究より形態的, 量的な肝の再生と,機能的, 質的な肝の再生との間にしばしば甚だしい隔差を生ずることが明らかになり,肝再生状態の評価には量的,質的な両面からの比較検討が必要とされることが明らかとなつた.

キーワード
肝再生, ICG Rmax, 機能的肝再生


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