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日外会誌. 81(7): 608-615, 1980


原著

ラット転移性乳癌MRMT-1を用いた凍結免疫に関する実験的研究

*) 岐阜大学 医学部第2外科学教室(主任:坂田一記教授)

操 厚*) , 佐治 董豊 , 松村 幸次郎 , 種村 広己 , 国枝 篤郎 , 坂田 一記

(昭和54年10月23日受付)

I.内容要旨
SD系ラットに3-methyl cholarithrene によつて誘発された転移性乳癌(MRMT-1)を用いて凍結免疫に関する基礎的研究を行つた.
実験方法は体重70~80gの4週齢雌性SD 系ラットに,肺瘍片200mg(約4×106コ)を背部皮下へ移植し5日,7日および10日目に凍給手術を施行し,外科的切除と比較検討した.凍結は液体窒素を冷却剤として-170℃ 3分間急速凍結後,室温にて緩徐解凍する方法を3回行つた.効果は局所再発率,死亡率,転移率,移植抵抗性,および脾,胸腺およびリンパ節の病理組織学的検索等を行い,比較検討した.
その結果凍結手術と外科的切除との治療効果がほぼ同等となる最長担癌期間は移植後7日目(腫瘍直径12~18mm)であつた.即ち局所再発率はそれぞれ11.8%と11.4%で有意差なく, 又局所治癒後の死亡率もそれぞれ8.3%と5.4%と有意差は見られず以下の実験を移植後7日目にて行つた.そこで移植7日後,凍結手術群と外科的切除群との免疫能の推移を移植抵抗性にて検討したところ,再移植腫瘍生着率よりみた移植抵抗性は凍結手術群では処置1,3,6週後にそれぞれ14.3,16.7,26.7%と抗腫瘍力は弱いものであつたが処置10週後には移植抵抗性80.0%と強い免疫能を有した.しかし移植17週後には44.4%と低下傾向を示した.一方外科的切除群の移植抵抗性は処置 1,3,6週後にそれぞれ40.0,33.3,18.2%と漸減し処置10週後には10.0%と抗腫瘍力はほとんど消失していた.又病理組織学的には腋窩リンパ節のgerminal center hyperplasiaは外科的切除群に比し凍結手術群で有意に増加を示しsinus histiocytosis も同様の傾向を示した.
以上の結果から凍結免疫は存在するものの抗腫瘍力は微弱なもので,凍結条件によつては逆効果を招くこともあり得ることが示唆された.

キーワード
凍結手術, 凍結免疫, 腫瘍免疫, ラット転移性乳癌, 腫瘍関連移植抗原


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