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日外会誌. 81(7): 616-621, 1980


原著

収縮性心膜炎に対する心膜切除の遠隔成績

1) 名古屋大学 医学部第1外科
2) 愛知医科大学 第2外科

村瀬 允也1) , 弥政 洋太郎1) , 土岡 弘通1) , 阿部 稔雄1) , 清水 健1) , 田中 稔1) , 野垣 英逸1) , 小林 淳剛1) , 椙山 直敏1) , 竹内 栄二1) , 土岡 弘通2) , 小林 政治2)

(昭和54年10月1日受付)

I.内容要旨
収縮性心膜炎18例を対称として術前諸検査と17年~ 6カ月後の遠隔期諸検府を比較検討して,収縮性心膜炎に対する心膜切除の遠隔成績について検討した. 13例で遠隔期調査が可能であった.
NYHA 重症度は術前II度3例,III度8例, IV度2例で, 遠隔期はI度9例,II度3例,III度1例であつた.胸部単純X線上の心胸郭比は比較的変化が少ない.心電図上の変化は,心房細動から洞調律になり継続していた症例はわずかに1例にすぎず,術後一過性に洞調律になつた他の2例は遠隔期心房細動にもどつていた.ST低下は術前6例に見られたが,遠隔期には消失していた. T波の平坦,逆転は術前,遠隔期のあいだに差を認めなかつた.
右心機能の指標としての肝腫大,肘静脈圧は著明に改善しており,遠隔期に至るまでよく維持されていた.
左心機能の指標としては超音波検査による計測を行い,正常対照例と比較検討した.
左室拡張終期容積指数は術前37.5mlより遠隔期74.4mlへと著明に増加していたが,対照の83.4mlには及ばなかつた.左室収縮期容積指数は術前16.4mlより遠隔期22.5mlに増加し,対照の22.0mlと全く差を認めなかつた.一回拍出指数は術前24.4mlより遠隔期51.9mlと著明に増加しているが,対照の61.5mlには逹しなかつた.駆出率は各々0.55,0.71で有意に増加し,対照の0.71と変らなかつた.
収縮性心膜炎に対する心膜切除術は非常に有効な治療法であり,長期にわたつてその効果は維持される.しかし,右心機能に比して左心機能の改善はやや少く,正常対照例と比較して劣り,心電図上の変化も長期にわたつて継続している.

キーワード
収縮性心膜炎, 心膜切除, 右室機能, 左室機能, 遠隔期心機能


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