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日外会誌. 81(7): 594-607, 1980


原著

制がん剤感受性試験に関する実験的ならびに臨床的研究

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)部門(指導:服部孝雄教授)

谷 忠憲

(昭和54年9月27日受付)

I.内容要旨
人がんにおいては,制がん剤に対する惑受性は個々の症例で異なることが多く,制がん剤を使用する前に制がん剤感受性を知ることが必要である.この目的のために, ヌードマウスに移植した人がんを用いてin vivo 系の制がん剤惑受性試験を試みた.対象はがん切除を行つた95症例で,判定可能なものは70症例であった.疾患は胃がん44例,大腸がん10例,乳がん5例およびその他のがん11例である.
制がん剤はMitomycinC (MMC), 5-Fluorouracil (5-FU)およびCyclophosphamide(CPM)の3種類を用い検討した.人がんに対する制がん剤の感受性を制がん剤別に検討すると, MMCは37.1%, 5-FUは28.6%, CPMは27.1%に感受性を示し, MMCに対する感受性が最も高かつた.人がんの発生臓器別に制がん剤の感受性を検討すると,胃がんではMMC>5-FU>CPM の順であり,大腸がんでは5-FU>MMC>CPMさらに,乳がんではCPM>5-FU>MMC の順となり,臓器により感受性に差のあることがみとめられた.この成績を同時に行ったin vitroの制がん剤感受性試験法であるSDI法の成績と対比したところ75%の症例で感受性の一致をみとめた.
制がん剤感受性により臨床効果を検討するために,感受性のある制がん剤を使用した適応群と感受性のない制がん剤を使用した非適応群の術後生存率を検討した.全症例における術後2年生存率は適応群が40.7%,非適応群37.3%であり,両群間には推計学的に有意差(p<0.05)をみとめた.また,背景因子が等しいstage IVの切除胃がんにおいても,術後生存率は適応群35.0%,非適応群0%と両群間に推計学的に有意差(p<0.05)をみとめた.
さらに,感受性のある制がん剤と感受性のない制がん剤を用いて行ったヌードマウス継代中の人がん2株の治療実験では,感受性のある制がん剤使用の治療群において腫瘍増殖は有意に抑制された.

キーワード
ヌードマウス, 制がん剤感受性試験, SDI法, 実験的化学療法


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