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日外会誌. 81(2): 119-132, 1980


原著

肝障害とアミノ酸処理能に関する実験的研究

北海道大学 医学部外科学第1講座(指導:葛西洋一教授)

辻󠄀 寧重

(昭和54年6月18日受付)

I.内容要旨
肝障害時には血清遊離アミノ酸が増加することが知られているが,障害肝自体が個々のアミノ酸をいかに処理しているかは不明である.雑種成犬を用い胆のう管結紮,総胆管結紮切離後2週および4週を経た閉塞性黄疸犬に,経門脈的に一定組成のアミノ酸液を投与し経時的に門脈,肝静脈,動脈の血清遊離アミノ酸および尿中遊離アミノ酸を測定し,障害肝のアミノ酸処理能を検討した. アミノ酸の肝摂取率は1-(5CH/CA+4Cp) (CH, CA, Cpはそれぞれ肝静脈,動脈,門脈の血清遊離アミノ酸濃度)およびアミノ酸体内保有率は(投与アミノ酸一尿中アミノ酸)/投与アミノ酸×100%にて計算した.その結果, 1) 末梢動脈血の総遊離アミノ酸は正常群に比較し,黄疸2週群では低値, 4週群では高値である.個々のアミノ酸では, 黄疸2週群ではPhe, Cys, Leu, Tyr, Glu, His, Val. Argが高く, Thr. Pro, Ser, Lys, Gly, Alaは低い. また,黄疸4週群ではPhe, Leu, lleu, Val, Arg, Glu, Gly, Cys, Thrが高くProは低い. これは肝におけるアミノ酸摂取率の差異によるものである. 2) アミノ酸を経門脈的に投与したときの肝アミノ酸摂取率は,黄疸2週後ではほぼ正常であるが, 4週群では低下する.個々のアミノ酸の摂取動態にも差異があり,黄疸2週群ではGly, Ala, Ser, 黄疸4週群ではArgの摂取率が著明に高く,逆に黄疸2週群ではPhe, Lys, His, 黄疸4週群ではVal. Leu, lleuの摂取率が低い. 3) アミノ酸体内保有率は黄疸2週群, 4週群の差異はなく,多くのアミノ酸は高い体内保有率をしめすが, Cys, His, の体内保有率は低い.
以上より末梢動脈血の遊離アミノ酸の動態は肝のアミノ酸摂取率および体内保有率に影響をうけ,肝障害の進行にともないアミノ酸の処理能が低下することが判明した.またアミノ酸の末梢動脈血濃度,肝摂取率,体内保有率よりアミノ酸代謝を検討することにより,肝障害時に必要なアミノ酸組成液および投与量の判定が可能となることを示唆した.

キーワード
血清遊離アミノ酸, 尿中遊離アミノ酸, 肝アミノ酸摂取率, アミノ酸体内保有率, 閉塞性, 黄疸


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