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日外会誌. 124(6): 562-564, 2023

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定期学術集会特別企画記録

第123回日本外科学会定期学術集会

特別企画(3)「外科における「働き方改革」への対応とその問題点」
2.働き方改革時代の外科医をどうマネージメントするか?―2024年4月に対応するために―

1) 地方独立行政法人市立東大阪医療センター 外科
2) 地方独立行政法人市立東大阪医療センター 消化器外科

山田 晃正1)2) , 矢田 大智1) , 小林 周平1) , 岡 啓史1) , 吉田 将真2) , 石田 智2) , 津田 雄二郎2) , 上田 正射2) , 中島 慎介2) , 谷田 司2) , 松山 仁2) , 中田 健2)

(2023年4月28日受付)



キーワード
働き方改革, 時間外労働, タスクシフト, インセンティブ, 意識改革

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I.はじめに
2024年4月には医師の時間外労働の上限規制が法的拘束力を持つようになり,外科医の働き方にも変容が求められている.当院は2次医療圏の中核病院(520床)で,夜間/休日を含む365日の外科(おもに消化器)の緊急手術に計12名(常勤医:9,外科専攻医:3)で対応している.2022年度実績は全917件の手術を実施し,うち172件(18.8%)が緊急手術であった.また,2024年4月からは上限960時間のA水準を取得する予定であり,時間外勤務を水準内に収めるため,様々な取組みを行っている.

II.目的
2024年4月に向けた当院での取組みを紹介するとともに,それら取組みに対する現場の声を調査することを目的とした.

III.方法と対象
当院で2024年に向けた六つの取組みとその有用性について外科医にアンケートを実施した.アンケートの対象は外科常勤医と外科専攻医を合わせた12名で,平均年齢は39.8歳(26~58)で全員男性である.アンケートの評価には「非常に良い」「良い」「どちらでもない」「あまり良くない」「非常に良くない」といった5段階尺度法を採用し,「非常に良い」をスコア5点,「非常に良くない」をスコア1点として,点数化した.

IV.取組み
(1)複数主治医制(グループ制)の導入:疾患グループを軸に複数主治医制とすることを徹底した.
(2)休日の病棟当番制の導入:土日祝には特別な理由がない限り,上長からの出勤復命は行わず,処置・データ確認を含め,病棟当番がその任にあたることとし,申し送り内容は電子カルテ上のファイルを用いて伝達することとした.
(3)日直/当直の事前希望調査:次月の当直シフト作成にあたり,すべての当直担当日を提示し,各医師の希望を反映するようにシフト組みを行うとともに,当直翌日の外来担当や手術(基本グループ別に曜日を固定)の情報を付記することで,当直翌日の予定手術への従事を回避し,いわゆる28時間ルールに抵触しないように配慮した.
(4)予定手術と当直/オンコールの突合:緊急手術を行う医師へのインセンティブ確保のためには,時間外加算の継続が有効な手段であり,そのために2週前に手術予定と当直・オンコールの摺り合わせを行い,抵触する際には,当直の回避・手術従事者の変更・手術日の変更等を担当医に促すようマネージメント側で介入している.
(5)“LINE WORKS”を用いた情報共有:携帯アプリを利用し,緊急手術の情報や病棟患者の病状などを共有し,可能な限り登庁中の人員へ業務委託や,出務中可能な人員の速やかな参集を実践している.
(6)外科医へのインセンティブの確保:緊急手術に関しては診療報酬の20%を従事人員で按分.

V.結果
アンケート回答結果の平均値を図1に示す.最も有効性があると回答を得たのは,「(3)日直/当直の事前希望調査」でスコアは4.7であった.一方,「(1)複数主治医制の導入」と「(5)“LINE WORKS”を用いた情報共有」は,良い取り組みと評価(スコア:4.5/4.3)されているにも関わらず,有効性に関しては最も低かった(スコア:3.8/3.8).特に「(1)複数主治医制の導入」は責任の所在を疑問視する術者側の心理やコ・メディカル側の持つ主治医絶対制の意識に対する改革も必要と思われた.また,「(6)外科医へのインセンティブの確保」に関してはスコア:3.9と有効性が若干低く,インセンティブの額に対する満足度が低いことが反映された結果と思われた.
医師のタスクシフティング先として9職種から重要と思われる順に9点→1点をつける方式のアンケートを行ったところ,看護師が平均8.1点と最も期待され,次いで医師事務作業補助者(7.1点)が重要視される結果となった(図2).

図01図02

VI.取組み開始後の動向
複数主治医制は徐々に浸透し,土日祝の出勤人数は減少したが,術後患者の管理は専攻医にとっての修練の一部でもあり,自己研鑽として登庁する場面もまだまだ散見される.こういった行動は,日本人固有の価値観のもたらす影響が多々あり1),加えて病棟サイドや患者・家族の意識も,依然,主治医絶対制を堅持する部分があることから,医師サイドのみならずコ・メディカルや患者サイドの意識改革も必要と思われる.
事前の調整で,DUTY翌日の手術従事はおおむね回避できてはいるが,急遽手術予定が変更になる場合なども含め,人員のマネージメントにはかなりの手間暇がかかる.
携帯アプリの利用は,速やかな情報共有面で大変有用であり,電子カルテ情報との安全な連携が期待される.
タスクシフティング先としては,予想通り看護師が重要視されており,今後,特定行為看護師やNP(Nurse Practitioner)の導入が急務と考えられる.

VII.おわりに
総合的に当院の取り組みは相対的に進んではいると評価されているものの,人員のマネージメントにかなりの手間暇がかかることや,マネージメントの内容に納得を得るための外科医側のみならず周囲の意識改革も必要であり,まだまだ課題は残されていると思われた.

 
利益相反:なし

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文献
1) 西田 裕子,寺嶋 繁典:日本人の働き方と「働き方改革」.Psychologist, 9: 61-70, 2019.

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