日外会誌. 124(6): 535-539, 2023
手術のtips and pitfalls
術中神経モニタリングを活用した甲状腺手術の実際
隈病院 外科 舛岡 裕雄 |
キーワード
術中神経モニタリング, 甲状腺手術, 反回神経, 上喉頭神経外枝, 声帯麻痺
I.はじめに
甲状腺の手術野には多くの運動神経が走行している.なかでも発声機能に関わる神経である,反回神経と上喉頭神経外枝は非常に細く,損傷されやすい繊細な神経である.これらの神経の温存に際し,近年保険収載された術中神経モニタリング装置(Intraoperative neural monitoring:IONM)を導入することで,手術方法が大きく進歩した.IONMを使用して,術中に反回神経を電気的に刺激し,声帯筋の収縮を筋電図または触知(Laryngeal twitch method)にて確認すること,および上喉頭神経外枝を刺激して,輪状甲状筋の収縮を筋電図または視認にて確認することで,これらの神経の同定および機能確認が可能となった.この結果,上喉頭神経外枝に関しては,IONMを使用することにより,上喉頭神経外枝麻痺が減少すると報告された1).一方,通常手術においてIONMを使用することで,声帯麻痺が減少するのかについては一定のコンセンサスは得られていないものの,再手術や癌による浸潤がある場合には,反回神経温存に有用であるとする報告が散見される.また,通常手術においても,いち早く反回神経を同定することで,余計な剥離操作が不要となり,手術時間短縮化や出血量の減少など安全性の向上にも寄与すると考えている.現在,IONMは全ての甲状腺切除術で保険収載されており,電極付き気管内挿管チューブを全症例で使用するべきかについては議論の余地があるものの,何らかの形による神経モニタリングは甲状腺手術において必須の手技となりつつある.本稿では,IONMを使用した甲状腺手術手技の要点について概説する.
謝 辞
図の作成に尽力頂いた隈病院病理診断科の鈴木彩菜氏に感謝申し上げます.
利益相反:なし
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