日外会誌. 124(6): 464-468, 2023
理想の男女共同参画を目指して
日本医学会分科会における女性割合の変遷
高槻赤十字病院 外科 平松 昌子 |
キーワード
女性割合, アンケート調査, 日本医学会分科会, 日本外科学会, 選出率
I.はじめに
日本外科学会は「女性外科医支援委員会(2007年発足)」,「男女共同参画委員会(2014年発足)」の活動の一環として,日本医学会分科会に対して女性医師割合などに関するアンケート調査を行ってきた1)
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3).2022年からは「ダイバーシティ推進委員会」が継続して行っている4). 13年間にわたる4回のアンケート結果の経時的な変遷は,女性医師活躍の足跡を辿るものとして貴重なデータであり,これらを解析することにより今後の課題を見据えたい.
II.日本外科学会会員数の年次推移
会員の性別記録の残る2005年以降の日本外科学会男女別会員数の年次推移を図1に示す.若手医師の外科離れが叫ばれている昨今ではあるが,日本外科学会の全会員数は幸い微増傾向にある.しかしこれは女性会員の増加によるところであり,2022年は10.8%に達した.新入会員数の女性割合は2022年で28.3%であるが,ここ10年男性新入会員は減少傾向を示している.女性外科医の臓器別偏在を加味すると,男性会員の減少は看過できない.
III.日本医学会分科会における女性割合の経時的推移
日本医学会分科会に対するアンケート調査は,2009年を初回として,これまで4回にわたって行われてきた1)
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4).それぞれの部会(社会・基礎・臨床内科・臨床外科)別の分科会数と回答率を表1に示すが,いずれも高い回答率を得ている.
アンケート内容はその都度若干の変化はあるが,会員数・医師会員数・専門医数・評(代)議員数・委員のべ数・役員数に占める女性割合はほぼ全回を通じて調査されており(委員のべ数のみ2007年は調査せず),これら客観的データの経時的変遷を検討した.なお以下に示す比率は各分科会における比率の平均を表す.
上記各要素をグラフにしてみると(図2),いずれにおいても全体に占める女性の割合は増加傾向を示している.さらにこれらの要素は大きく四つのグループに分かれることがわかる.すなわち女性会員割合が19.1%(2009)から26.6%(2022)と最も上位に位置し,少し下がって女性医師会員割合と女性専門医割合がほぼ並んで推移し,さらに下がって女性評(代)議員割合と女性委員割合が伴走,女性役員割合が最も低く, 四つのグループがほぼ並行して推移している.これは各部会別に検討してみても,同様の傾向が得られた.
見方を変えて,全医師会員の専門医取得率と,女性医師会員のうちでの専門医取得率を経時的に見ると(図3a),2009年には女性の専門医取得率はやや低かったものの(全体36.8%;女性27.9%),2022年にはほぼ同等となっている(全体39.6%;女性38.8%).しかし全会員中の評(代)議員選出率と女性会員中の評(代)議員選出率を比較すると,女性は全体のほぼ半分の選出率であり,経年的に見ても平行線を辿っている(図3b).委員の選出率については,評(代)議員選出率と概ね同様の推移を示していた(図3c).さらに役員選出率に至っては,女性会員のうちから女性役員に選出される率は,全会員中の役員選出率の1/4から1/3程度と低く推移し,評(代)議員選出率と同様に平行線のまま推移している(図3d).これらの傾向も,各部会別の検討でも同様であった.
これまでクウォーター制や2020-30(2020年までに女性管理職を30%に)等のポジティブ・アクションが試みられてきたが,1/4や30%等の数字に根拠はない.まずは評(代)議員・委員・役員の選出率が男性と女性で同率になること,すなわち上記2本の線を専門医取得率と同様に接近させていくことを,目標とすべきであろう.
IV.日本外科学会における取り組み
日本外科学会では2020年に初めて非選挙による女性理事2名をおいたが,それ以前の時点では23ある委員会に女性の委員長はおらず,副委員長は33名中2名(6.1%),またのべ419名の委員のうち女性は41名(9.8%)で,これら全てで女性が占める割合は9.1%(43/475)であった.しかも女性委員は「男女共同参画委員会」や「外科医労働環境改善委員会」など,特定の委員会に集中しており,女性委員が一人もいない委員会も多かった.
代議員については一般社団法人としての性質上,特定の性別の優先枠を設けることには社員の平等性を担保する点から問題もあるとされたため,まずは女性委員の総数を増やし,学会運営に積極的に関わっていただく方針とした.この結果,新体制においては全ての委員会に原則1名以上の女性委員をおき,女性委員長はのべ3名(13.0%),副委員長は33名中4名(12.1%),のべ委員数は51/452(11.3%)で,計11.4%(58/508)へと増加した.
これらの施策により,III.で示した各割合が日本外科学会においてはどのように変わったかをみると,専門医は他学会同様に女性も同等に取得するようになった(図4a).加えて女性会員からの役員選出率・委員選出率ともに全体での選出率と同程度まで増加し(図4c, d),これは他学会にも先んじた改革といえる.一方代議員選出率については乖離が続いた状態であるが(図4b),これについては次回選挙より代議員枠を50名増やし,増加分は原則として女性を選任していただくよう各選挙区にお願いすることが,令和5年度の社員総会で承認されたことを申し添える.今後の改善が望まれる.
V.おわりに
各医学会分科会において,この13年で女性の割合は着実に増加しており,日本外科学会においても同様である.女性幹部の積極的登用については,評(代)議員・役員の何%を女性にするかという議論より,女性会員からの選出率を男性のそれと同等にすることをまず目標にするべきであろう.日本外科学会においては役員・委員に関してはこの目標は達成しつつあるが,代議員数に関しては次年度以降の改善を待ちたい.
謝 辞
アンケートにご協力いただきました日本医学会各分科会の関係者のみなさま,これまでのアンケート調査の実施に携わった日本外科学会の委員会メンバーおよび事務局に感謝申し上げます.
利益相反:なし
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