日外会誌. 122(6): 731-732, 2021
定期学術集会特別企画記録
第121回日本外科学会定期学術集会
特別企画(6)「各疾患登録とNCDの課題と将来」
6.全国胆道癌登録のNCD実装における課題と将来
藤田医科大学 医学部消化器外科学講座 堀口 明彦 (2021年4月9日受付) |
キーワード
Natioal Clinical Database(NCD), 全国胆道癌登録
I.はじめに
National Clinical Database(NCD)は外科関連の専門医制度と連携し,また,臨床現場の治療成績向上に向けた取り組みを通じて,医療の質の向上,適正な医療水準の維持に寄与する世界に誇るべきAll Japanのデータベースである.各臓器別がん登録により,がん診療にかかわる診療ガイドラインの検証,臓器がん登録の実施状況,分析・結果の活用による治療成績を含めた将来がん医療展開など多くの研究課題が想定される.全国胆道癌登録のNCD実装にむけて課題と将来について述べる.
II.全国胆道癌登録とプロジェクト研究
全国胆道癌登録は1988年から前身の胆道外科研究会から開始され,現在は日本肝胆膵外科学会主導で全国胆道癌登録事業として行われている.1998年から2018年度までに胆嚢癌20,239例,胆管癌29,280例,十二指腸乳頭部癌8,743例が登録されている(図1).
全国胆道癌登録に基づいた研究論文を2009年,2013年,2016年,2020年にJournal of Hepato-Biliary-Pancreatic Scienceに全国胆道癌の治療成績,外科手術術式の検証,Union For International Cancer Control(UICC)TNM分類との比較などを報告してきた1)
~
4).
III.課題と将来
2022年度から胆道癌登録のNCD実装予定であり,登録数のさらなる増加が期待される.一方,現行の胆道癌登録は日本肝胆膵外科学会評議員施設631施設に詳細ながん取扱い規約の項目を多忙な外科医が入力を担っている.NCD移行で入力項目を厳選し外科医の繁忙が解消される一方,日本独自の詳細な研究が滞ることのないような工夫が必要である.
また,将来,胆道癌に対する遺伝子治療などを含めた非手術症例の登録は必然となるため,内科医の協力が必須である.
IV.おわりに
全国胆道癌登録のNCD実装により,悉皆性とともに,日本の詳細な研究を継続できるシステムを構築することにより,日本の優秀な胆道癌治療成績を世界に発信できる.
利益相反:なし
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