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日外会誌. 122(6): 639, 2021

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会員のための企画

「遠隔外科医療の現状と展望」によせて

山梨大学 医学部第一外科

河口 賀彦



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新型コロナ感染症の拡大により,災害時や医療資源の乏しい地域における遠隔診療が新たな診療形態として注目されている.厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を策定し,オンライン診療の運用方針を定めており,令和元年の改訂で外科医療において遠隔手術の実施が盛り込まれた.
遠隔手術が現実味を帯びてきた背景として,ロボット支援手術の普及と情報通信技術の進歩が挙げられる.手術支援ロボットは当初,戦場の負傷兵に対する治療を行う目的で開発され,その後臨床応用され瞬く間に世界中に普及した.本邦では前立腺全摘除術に対し保険収載され,多くの施設で泌尿器科を中心に導入された.2018年4月の診療報酬改定で7領域12術式へのロボット支援手術が承認され,様々な領域においてその割合が増加しており,ロボット手術に関する主な特許が切れることから新たな手術支援ロボットの開発競争も進み,更に普及するものと思われる.
これまではロボット支援手術による遠隔手術を実施する上で,通信速度による操作遅延等の課題があったが,5Gなどの高速通信規格の登場により技術的にはオンサイトでの手術に遜色ないレベルでの手術が可能になってきた.国内において更なる情報ネットワークの構築や技術開発が行われ,これら技術革新に関する法的環境整備が加わることにより,遠隔手術は近い将来実現可能なものになると確信される.
日本外科学会では,これら背景を踏まえ遠隔手術実施推進委員会が発足し,遠隔手術に関するさまざまな検証が開始されている.今号の「会員のための企画」では,その委員会で中心的な役割を担い,ロボットを活用した外科医育成を推進しておられる弘前大学消化器外科の袴田健一先生にご執筆をお願いした.遠隔手術において現在取り巻く様々な問題点や将来への展望など,多くの切り口で論じた非常に充実した内容であり,会員の皆様には是非,御一読いただければ幸いである.

 
利益相反:なし

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