日外会誌. 122(4): 420-421, 2021
手術のtips and pitfalls
縦郭リンパ節郭清術の十分な視野確保―transmanubrial approachを中心に―
東京女子医科大学 呼吸器外科 前田 英之 , 神崎 正人 |
キーワード
経胸骨柄アプローチ, 甲状腺癌, リンパ節転移
I.はじめに
縦隔へ進展する甲状腺癌において,リンパ節転移の局在や周囲の血管浸潤の有無により,頸部操作単独では摘出困難な症例が存在する.解剖学的に頸部操作のみで到達が不能な症例はもちろんであるが,血管浸潤が疑われる症例では,血管損傷による出血が致死的となるため,十分な術野の確保が肝要である.
手術は内分泌外科と合同で施行しており,通常は頸部操作に引き続き当科で縦隔の術野を確保している.無名静脈や腕頭動静脈,気管周囲のリンパ節であれば,胸骨正中切開で到達が可能である.しかし,左右の静脈角,鎖骨下動静脈は胸鎖関節の後方に存在しているため,この付近の病変については正中切開でのアプローチが困難である.主なアプローチ方法としては,anterior transcervical approach,hemi-clamshell approach,transmanubrial approach(TA)などがある1)
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3).これらは,呼吸器外科領域で肺尖部胸壁浸潤癌や縦隔腫瘍に対して用いられる方法である.われわれは胸鎖関節を温存しつつ,良好な視野が得られるTAを好んで用いている.原法では,第Ⅰ肋骨のみを切断しているが,より尾側の術野操作を行う際には,必要に応じて第Ⅱ,第Ⅲ肋骨を切断し,胸骨の切開線を下方に延長する.これにより良好な術野が得られ,血管形成にも安全に対応が可能である(肺腫瘍の手術では肺門操作も可能である).
利益相反:なし
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