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日外会誌. 121(4): 479-480, 2020

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卒後教育セミナー記録

日本外科学会第96回卒後教育セミナー(令和元年度秋季)(第81回日本臨床外科学会総会開催時)

知っておくべきサブスペシャルティ領域別トレーニングプログラム
 3-1.知っておくべきサブスペシャルティ領域別トレーニングプログラム
―心臓血管外科―

大阪市立大学 心臓血管外科

柴田 利彦

(2019年11月16日受付)



キーワード
心臓血管外科, off the job training

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I.はじめに
心臓血管外科専門医プログラムは日本胸部外科学会,日本心臓血管外科学会,日本血管外科学会の3学会構成心臓血管外科専門医認定機構が策定している.いわゆる2階建て領域であり,専門医プログラムはカリキュラム制をとっている.卒後最短8年目で取得可能である.プログラムの概要と特徴を示す.

II.心臓血管外科専門医プログラムの概要と特徴
1)前述の3学会のうち2学会に3年以上の会員歴を要する.
2)心臓血管外科では成人心臓・胸部大血管,先天性心臓,腹部大動脈・末梢血管の3領域の研修が求められている.昨今カテーテル治療が心臓弁膜症,大動脈瘤治療,末梢血管外科領域において普及してきており,カテーテルによる血管内治療の手技も必要とされている.
3)カリキュラムを遂行するための病院群を策定し,前述の4領域すべての研修をこの病院群内でカバーできるようにしなければならない.専門医の申請には3領域において最低10例の手術経験(術者あるいは助手)を必要とする.
4)専門医の受験には手術経験,学術業績,医療安全セミナーへ参加(上記3学会が主催のセミナーに限定)が要件として挙げられている.
5)Off the job training(OJT)を30時間以上行うことも要件の一つである.OJTとは患者対象としない手技のトレーニングであり,上級医の指導下に行った手技練習のみを専門医制度では認定対象としている.
6)簡易な吻合・縫合練習からブタ心臓を用いたwet labなどという幅広い内容を認定しうるが,発行した認定証に記載された練習時間のみを修練時間として認める(図1).上記3学会合同でOff the job trainingテキストを作成した(図2).
7)心内手術手技の練習としてwet labがよく用いられている.上記30時間の要件を満たすために各地でwet lab開催頻度が増加しており,心臓血管外科学会としてwet lab開催状況把握のため全国調査を行った.その結果,年間5,000個以上のブタ心臓が使用されていることが判明した.
8)wet labには学生や研修医が参加することも多いが,開催費用・場所および企業からの協力に鑑みると,各参加者のレベルに応じたトレーニングとして本当にwet labが必要・有用であるのかを再考する必要がある.
9)学会としてはwet labに偏らない幅広いOJTを推奨しており,前述のOff the job trainingテキストには様々な工夫が動画付きで紹介されている.OJTは1回のみの体験学習ではなく,日頃から繰り返しトレーニングすることが大切である.そのためには,各施設で日常使用しうるような練習器具の開発や練習環境の整備が必要がある.

図01図02

III.おわりに
サブスペシャルティ領域における専門医トレーニングはプロフェッショナルとしての技術や学術のみならず,手術室および病院内のよいリーダーとしてのmindsetをもつような指導も必要である.

 
利益相反:なし

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