日外会誌. 121(3): 336, 2020
手術のtips and pitfalls
「蘇生的な大動脈遮断におけるtips and pitfalls」によせて
大阪警察病院 ER・救命救急科 水島 靖明 |
出血性ショックの治療原則は,確実な止血術であり,活動的出血をいかに早く,また実際どのような手技を選択し行っていくのかという判断が重要となります.しかし,重篤なショックの場合,まずは用手的圧迫などの一時的止血を行い,損傷の程度,手術の人員,輸液,輸血,手術器材の不足などの再評価を行い,その上で次の戦略(止血法)を立てていかなければ,患者の救命は望めません.より重大な損傷では,病態を改善(蘇生)するためには,この究極の一時的止血術として「大動脈遮断」が必要となります.このことを行うことにより,心停止の回避と脳潅流圧や冠潅流圧の維持が可能となり,その後の確実な止血術に至る治療戦術につなぐことができます.今回,この蘇生的な大動脈遮断法として代表的な二つのアプローチである「開胸による下行大動脈遮断」と「バルーンによる大動脈遮断」を二人のエキスパートの先生方にtips and pitfallsとして企画し,解説をいただきました.切迫性,確実性や侵襲性など,どちらの方法を選択すべきか,今だ,議論が多いところでありますが,状態に応じて,二つの方法を使い分けることができ,途中で変更する判断や,能力が,患者の救命には必要となります.また,どちらとも,蘇生的な処置であり,誤った方法は致命的な合併症を引き起こします.外傷に携わる外科医として,その究極の救命のため,今一度,手技のこつや合併症などの確認に,参考としていただければ幸いです.
利益相反:なし
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