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日外会誌. 121(3): 328, 2020

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「全身用立位CTの開発と臨床応用―健康長寿の時代を迎えた今,機能異常の早期発見を目指して―」
によせて

慶應義塾大学 外科

尾原 秀明



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CT(X-ray Computed Tomography)は1970年初頭に登場して以来,多くの疾患の診断に活用されている.わが国は人口あたり台数で世界一のCT普及国であり,外科領域では欠かせない診断器機の一つである.CT検査は頭部から頚部,胸部,腹部,四肢等の広範囲の検査に適用され,短時間で3次元情報を含め多くの情報が得られることから,診断,治療方針決定に不可欠な検査である.歴史を振り返ると,CTは造影,撮像高速化,低被ばく化など様々な進歩を遂げてきたが,臥位で撮像することに変わりはなかった.しかしながら,人は基本的には立位や座位の姿勢で活動し,ヘルニア・臓器脱,下肢静脈うっ滞や静脈瘤,整形外科的な運動器疾患など,重力や立位で荷重がかかることで明らかになる疾患は少なくない.また,呼吸・摂食機能など立位・座位でしか評価できないものもある.さらに,肝臓や腎臓などの臓器移植後では,臥位から立位への体位変換による血流動態や解剖学的位置関係の変位などは,超音波検査である程度の評価は可能だが,客観的評価は困難である.そのような中,慶應義塾大学放射線科の陣崎雅弘教授が,産学連携により世界初の全身用立位CTの開発に成功し,2017年より臨床研究を開始した.そこで今回,陣崎教授に,全身用立位CTの開発経緯からその実用性,今後の展望につき執筆をお願いした.全身用立位CTにより,人体の機能と解剖への理解がより深まり,今後の外科診療の進歩発展に大きく寄与すると確信している.

 
利益相反:なし

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