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日外会誌. 121(2): 261-262, 2020

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生涯教育セミナー記録

2019年度 第27回日本外科学会生涯教育セミナー(東北地区)

各分野のガイドラインを紐解く
 6.腹部救急領域のガイドラインを紐解く

弘前大学大学院 医学研究科消化器外科学講座

坂本 義之 , 諸橋 一 , 三浦 卓也 , 袴田 健一

(2019年9月14日受付)



キーワード
Evidence-based medicine, algorithm, life-threatening, 2 step method

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I.はじめに
日本で初めてEvidence-based Medicineに則った手法で作成されたガイドラインが,2003年に日本腹部救急医学会から刊行された「急性膵炎診療ガイドライン」で,これはその後のガイドライン作成の手本となった.その後2005年には「急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン」が発刊され,さらに国際版ガイドライン(Tokyo Guidelines)も刊行された.このような流れを受けて,急性腹症に関するガイドライン作成の必要性も高まり,2015年に「急性腹症診療ガイドライン2015」が発刊された1).このガイドラインでは急性腹症は,「発症から1週間以内の急性発症で,手術などの迅速な対応が必要な腹部疾患である」と定義され,一つ一つのclinical question(CQ)に対し,文献のsystematic reviewを行うことで,その対応を提示している.

II.初期診療アルゴリズム
「急性腹症診療ガイドライン2015」では,急性腹症のアルゴリズム(2 step methods)が推奨されている(図1).これは生命を高度に脅かす病態(life-threatening)とそうでないものを鑑別することを目標としている.
ステップ1:患者のバイタルサインのABCDを確認する.これに異常をきたす疾患としては①超緊急疾患 急性心筋梗塞,腹部大動脈瘤破裂,大動脈解離,肺動脈塞栓症.それに準ずる②緊急疾患としては肝癌破裂,異所性妊娠,腸管虚血,重症急性胆管炎,敗血症性ショックを合併した汎発性腹膜炎,内臓動脈瘤破裂等である.
ステップ2:バイタルサインに問題がない場合は,病歴と身体所見,検査所見から腹痛の原因が外科的処置を有するものかどうか判断する.特に出血,臓器の虚血,汎発性腹膜炎,臓器の急性炎症は緊急手術を行うことを検討しなければならない(表1).

図01表01

III.おわりに
「急性腹症診療ガイドライン2015」の刊行により,科学的な思考で急性腹症の診療が可能となった.急性腹症の中で緊急手術となることが多いのは,急性虫垂炎や急性胆嚢炎,ヘルニア嵌頓,腸閉塞,消化管穿孔などであるが,これらだけでなく緊急度の高い疾患にも対応できるよう「初期診療アルゴリズム」の習得は必須であると考える.

 
利益相反:なし

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文献
1) 急性腹症診療ガイドライン出版委員会:急性腹症診療ガイドライン2015.医学書院,東京,2015.

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