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日外会誌. 127(3): 295-304, 2026


特集

遺伝子診断が変える乳腺外科診療

6.遺伝子情報に基づいた乳癌内科的治療の変遷と精密医療の現在

国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科

下井 辰徳

内容要旨
乳癌治療は,形態学的分類に基づく画一的治療から,分子プロファイルを基盤とする精密医療へと発展してきた.ホルモン受容体およびHER2の同定は個別化治療の出発点となり,近年のハイスループット解析技術の進歩により,従来のサブタイプを超えた包括的腫瘍プロファイリングが可能となった.早期乳癌では,多遺伝子アッセイにより術後補助化学療法の適応が精緻化され,さらに循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた微小残存病変(MRD)検出が新たな予後評価手法として注目されている.転移・再発乳癌においては,BRCA1/2,PIK3CAAKT1PTENESR1などのゲノム変化が,それぞれPARP阻害薬,PI3K/AKT/mTOR経路阻害薬,次世代内分泌療法といった治療選択に直接結びついている.包括的ゲノムプロファイリング(CGP)は,TMB-H,MSI-H,BRAF変異,RETNTRK融合などの稀なバイオマーカーを同定するために臨床実装が進んでいるが,現時点では適合治療を受けられる患者は少数にとどまっている.本稿では,乳癌における全身薬物療法の歴史的進展を,組織学的分類から現在のマルチオミクス精密医療へと至る流れの中で概説し,早期から進行・再発乳癌に至るまで,最新の個別化治療戦略およびその将来展望について論じる.

キーワード
乳癌, がんゲノム医療, がんゲノムプロファイリング検査, BRCA1/2, 精密医療


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