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日外会誌. 127(3): 305-309, 2026


特集

遺伝子診断が変える乳腺外科診療

7.遺伝子診断が変える乳腺外科診療―遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)を中心に―

愛媛大学大学院医学系研究科 肝胆膵・乳腺外科学

村上 朱里

内容要旨
近年,遺伝子診断の進展により乳腺外科診療は大きな転換期を迎えている.とくに遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)は,外科治療の意思決定に直接的な影響を及ぼす重要な疾患概念である.HBOCは主にBRCA1/2遺伝子変異を背景とし,乳がんおよび卵巣がんの発症リスクが著しく高い点に特徴がある.遺伝子変異は特定の腫瘍の有無にかかわらず,将来のがん発症リスクを規定し,外科治療を単なる腫瘍切除から,予防的外科介入を含むリスク管理へと拡張した.対側予防乳房切除や予防的乳房切除は,BRCA変異保有者において将来の乳がん発症リスクを大幅に低減し得る.一方で,これらの手術は身体的侵襲や心理的影響を伴うため,患者の価値観を踏まえた慎重な意思決定が不可欠である.なお,BRCA変異保有者であっても腫瘍学的条件や患者の意向により乳房温存術が選択される場合があり,遺伝子診断は切除範囲を一律に規定するものではない.遺伝子診断は「治療する外科」に加えて「リスク管理を担う外科」という役割を外科医に求めるものであり,HBOC診療は遺伝診療時代における外科医の新たな役割を示す代表的モデルである.

キーワード
HBOC, 遺伝性乳癌卵巣癌症候群, 遺伝子診断, 予防的手術, 乳癌


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