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日外会誌. 122(4): 379-385, 2021


特集

直腸癌治療の温故知新

4.直腸癌に対する術前治療 ―RT,CRT,NACそしてTNT―

東京大学 医科学研究所フロンティア外科学分野

阿彦 友佳 , 愛甲 丞, , 志田 大

内容要旨
本邦では局所進行直腸癌に対する標準治療は,「全直腸間膜切除(TME)+側方郭清」・「pStage Ⅲの場合は術後補助化学療法」であり,術前治療は一般的には行われていない.一方,側方郭清が行われない欧米では,1980年代よりTMEとともに術前治療として術前放射線療法(術前RT)が行われるようになり,数多くの臨床試験を経て,現在では,術前化学放射線療法(術前CRT:長期照射long-course RT+フッ化ピリミジン)あるいは術前短期照射(short-course RT)が標準治療となっている.これら術前治療は,局所制御には優れるとされるが,全生存率は改善しない.そんな中,近年欧米において,術前治療により臨床的完全奏効(clinical complete response, cCR)が得られたら早急な手術を回避して経過観察するWatch & Wait療法や,強力な術前治療であるとして術前に放射線療法と全身化学療法の両方を行うtotal neoadjuvant therapy(TNT)が登場してきた.これらにより手術を回避できる症例が一定数あることや良好な生存率が期待できることが報告され,Watch & Wait療法とTNTは欧米のガイドラインに記載されるようになった.個別化医療/precision medicineが叫ばれる現在,本邦の外科医も,直腸癌に対する様々な治療optionを熟知しておくことが望ましい.

キーワード
局所進行直腸癌, 術前化学放射線療法, 術前化学療法, Watch & Wait, total neoadjuvant therapy


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