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日外会誌. 121(4): 423-428, 2020


特集

食道癌診療の現況と展望

4.内視鏡治療

東京医科歯科大学 消化管外科

川田 研郎 , 中島 康晃 , 東海林 裕 , 星野 明弘 , 松井 俊大 , 山口 和哉 , 松山 貴俊 , 徳永 正則 , 絹笠 祐介

内容要旨
食道癌の内視鏡診断や治療後の経過観察に上部消化管内視鏡は大きな役割をはたしている.過去にはヨード染色による早期食道癌スクリーニングが主流であったが現在はNBIを始めとした画像強調内視鏡で早期癌の拾い上げが容易となった.1980年代には粘膜癌でも食道切除再建術や放射線治療が行われていたが,1990年代から内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection,EMR),さらに2000年代に入り内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection,ESD)が開発され,食道早期癌に適応されるようになった.任意の大きさに一括切除可能なESDは多分割EMRの問題であった局所再発率を下げ,また各種デバイスや高周波凝固装置の改良により,穿孔や出血を回避でき,安全で低侵襲な治療を提供できることになった.さらに周在性の広い病変に対する内視鏡治療後の高度狭窄への対策も同時に進み,切除+狭窄対策をセットにした治療が普及しつつある.また少なからず転移の可能性があるT1a-MM,SM癌に対してもまず内視鏡治療を行い,病理診断を行って追加治療を勧める段階的な治療戦略も受け入れられつつある.
高齢化社会を迎え,切除可能食道癌でも,手術を希望せず根治的化学放射線治療を希望した方の遺残再燃病変へのPDT治療も本邦で開発され,ステント治療も含め,内視鏡治療は,多様な背景をもつ食道癌患者への治療の大きな柱となっている.

キーワード
食道早期癌, 内視鏡治療, ESD, EMR, PDT


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