[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (1125KB) [全文PDFのみ会員限定]

日外会誌. 121(2): 169-176, 2020


特集

臓器移植の現状と展望

4.肝移植

長崎大学大学院 移植・消化器外科

原 貴信 , 江口 晋

内容要旨
わが国では年間400~450例の肝移植が行われ,その80%以上を生体肝グラフトに頼っている.1989年に第1例目が行われて以降,生体肝移植は末期肝不全に対する根治療法として確立され,脳死全肝移植と同等の成績を収めてきた.一方,脳死肝移植数は2010年の改正臓器移植法成立後も年間60例程度にとどまっており,生体ドナーに極端に偏った現状は世界的にみると特殊である.脳死下臓器提供が限られている以上,レシピエントの状況によってはマージナルグラフトを使用せざるを得ない場合もある.マージナルグラフト使用に関する一定の基準作りが求められるとともに,machine perfusion技術の確立にも期待がかかる.直近の話題として脳死肝移植のレシピエント選択基準が2019年5月15日より改正され,基本的にChild-Pughスコア10点以上での登録,登録後はMELDスコアを実施順位に反映させることとなった.また,肝細胞癌に対する適応基準が従来のミラノ基準から,5-5-500基準にも拡大された.このように開始から30年を経て移り変わってきたわが国の肝移植医療であるが,短期成績がこの30年で改善する一方,長期成績はあまり変わっていないことが指摘されている.移植肝の継続的な評価は勿論,高血圧や糖尿病,高脂血症など併存症の治療,免疫抑制剤減量による腎保護,de novo悪性腫瘍のスクリーニングが重要と考える.

キーワード
肝移植適応, 脳死肝移植, 生体肝移植


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。