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日外会誌. 119(2): 157-163, 2018


特集

外科診療における遺伝学的検査の意義

4.乳腺

聖路加国際病院 乳腺外科

竹井 淳子 , 山内 英子

内容要旨
乳癌は女性の罹患数,第1位であるが,その約1割が単一遺伝子の変異によって発症するといわれている.遺伝性乳癌の代表は,BRCA1BRCA2に変異を有する遺伝性乳癌卵巣癌症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer:HBOC)であり,乳癌全体のうちの約3〜5%が関与すると言われている.リスク低減の方法が概ね確立されており,サーベイランス,リスク低減手術,薬物療法が挙げられる.多くは乳癌罹患時に診断されるため,既に発症した乳癌治療と並行してマネージメントする必要がある.また,TP53変異の疾患であるLi-Fraumeni症候群では,放射線被曝による二次性悪性腫瘍のリスクが極めて高いことが知られている.乳房部分切除後は放射線照射が必須になるため,Li-Fraumeni症候群では,乳房切除術を推奨している.術式決定に大きく関与するため,患者の希望に沿いつつタイミングを逃さず遺伝カウンセリングを行う必要がある.
今後,次世代シークエンサーにより,予期せず発見される多数の遺伝子情報の解釈とアプローチが必要となり,コンパニオン診断としての位置付けも期待されており,個々に応じたサポートはより必要になっていくであろう.

キーワード
BRCA1 , BRCA2 , HBOC(Hereditary Breast and Ovarian Cancer), Li-Fraumeni Syndrome


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