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日外会誌. 118(4): 422-427, 2017


特集

大腸癌診療の最近の動向

6.早期大腸癌に対する内視鏡的治療法

1) 広島大学病院 内視鏡診療科
2) 広島大学病院 消化器・代謝内科

田中 信治1) , 住元 旭1) , 平野 大樹2) , 二宮 悠樹1) , 田丸 弓弦1) , 林 奈那1) , 岡 志郎2) , 茶山 一彰2)

内容要旨
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術:endoscopic submucosal dissection)の普及によって,大きさにかかわらず早期大腸癌の多くは内視鏡的完全一括切除が可能となってきたが,「大腸癌治療ガイドライン2016年度版」には,「内視鏡的摘除標本がpT1癌であった場合,組織学的検索で,(1)SM浸潤度 1,000μm以上,(2)脈管侵襲陽性,(3)低分化腺癌,印環細胞癌,粘液癌,(4)浸潤先進部の簇出(budding)Grade 2/3,のうち一因子でも認めれば,追加治療としてリンパ節郭清を伴う腸切除を考慮する」と述べられている.これは,外科的切除をすべきという意味ではなく,考慮・検討すべきという意味であるが,近年の研究成果により,SM浸潤度以外にリンパ節転移危険因子がなければ,SM浸潤度にかかわらず大腸T1癌のリンパ節転移率は約1%程度であることが明らかになった.将来的には,適応のあるcT1癌はSM浸潤度にかかわらず摘除生検として内視鏡的治療を先行させて,摘除標本の病理学的あるいは分子病理学的解析結果によって追加治療方針を決定する時代が遠くない将来に来るであろう.

キーワード
大腸T1癌, 大腸SM癌, リンパ節転移, 内視鏡的治療, 追加手術


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