[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (429KB) [会員限定]

日外会誌. 118(1): 38-45, 2017


特集

外科手術における画像支援の現状と今後の展開

6.肝臓―肝臓手術における術前シミュレーションと術中ナビゲーション:3次元CTと蛍光イメージングの応用―

東京大学医学部 肝胆膵外科・人工臓器移植外科

河口 義邦 , 長谷川 潔 , 阪本 良弘 , 國土 典宏

内容要旨
2000年代に入り広まってきた3次元シミュレーションにより,肝臓の全容積,門脈・肝静脈の区域容積を簡便に測定することが可能となり,肝切除の術前計画は容易で信頼性が高くなった.同シミュレーション技術は,2012年4月に「肝切除手術における画像支援ナビゲーション」として保険収載されるに至っている.このように普及しつつある術前シミュレーションに比べ,肝切除における術中ナビゲーションが実臨床で広く普及するためには改善の余地があるのが現状である.現在,術中ナビゲーションとして術中超音波と術前CTを同期させた術中イメージング(Real-time virtual sonography)が開発され臨床応用されている.同技術により,術中超音波で不明瞭な腫瘍を超音波プローベの位置情報と同期させたmultidetector-row computed tomography(CT)上で,腫瘍を同定可能である.しかし,術前CTと術中超音波の同期の精度に更なる調整が必要である.インドシアニングリーン(ICG)を蛍光源とした術中イメージング(ICG蛍光法)による肝切除ナビゲーションも報告が増えている.ICG蛍光法により,腫瘍,胆道,門脈区域,肝静脈閉塞領域を蛍光でイメージングすることが可能であり,簡便で安全なナビゲーション法として応用可能である.本法の問題点は,蛍光を画像化する際に使用する近赤外光の組織透過性の問題で10mm以深の腫瘍や胆管の描出が不良となる点である.今後の技術の進歩により,術中ナビゲーションの精度・有効性が向上し,肝切除が更に安全なものとなることが期待される.

キーワード
肝切除, 3次元シミュレーション, 術中ナビゲーション, Real-time virtual sonography, 蛍光イメージング


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。