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日外会誌. 115(6): 334-337, 2014


特集

わが国の小児外科五十年のあゆみ

7.小児の移植のあゆみ

熊本大学 小児外科·移植外科

猪股 裕紀洋

I.内容要旨
小児外科領域での臓器移植は,肝臓と小腸が主である.肝移植は,世界でも日本でも,小児患者を対象に始まった.1989年の生体肝移植の開始前から1995年頃まで,いわゆる渡航移植が小児でも行われたが,その後生体肝移植が定着している.1999年から脳死肝移植が始まったが,小児ドナーは極めて希で,2010年の法律改正後も,小児レシピエントでは分割肝移植が主体である.2013年末までに,生体肝移植7,255例,脳死肝移植216例が行われ,このうち18歳未満は,生体2,609例,脳死28例であった.小児肝移植後の5年生存率は,生体脳死ともに85%以上で良好に維持されている.日本の小児肝移植から,小児免疫抑制療法の確立,小児血液型不適合肝移植の妥当性,免疫寛容の可能性,新生児への生体肝移植の適応,等の新たな知見が世界へ発信されてきた.一方,小腸移植も生体移植として開始され,その後脳死移植も開始されたが,未だ保険適応にないこともあって一般医療化していない.この四半世紀でのわが国の移植医療の発展は,不治の小児疾患の救命に大きく寄与したが,脳死分割肝移植のさらなる利用,患児の社会適応や妊娠出産に至るような長期的視点でのフォローアップ体制の普遍化が求められる.

キーワード
小児, 肝移植, 小腸移植, 生体移植, 分割肝移植


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