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日外会誌. 115(4): 185-189, 2014


特集

胆道癌外科治療の現況

3.胆嚢癌の外科治療の現況―特に外科切除の限界,至適切除範囲に関して―

新潟大学大学院 医歯学総合研究科消化器·一般外科学分野

坂田 純 , 滝沢 一泰 , 高野 可赴 , 小林 隆 , 皆川 昌広 , 若井 俊文

I.内容要旨
胆嚢癌の治療において最も高い根治性が得られる治療は依然として外科切除である.胆嚢癌に対する外科治療は進展範囲に応じた積極的な拡大手術が行われ,術後合併症の軽減,遠隔成績向上の両面で一定の成果をあげてきた.胆嚢癌の肝内進展様式には,直接浸潤,血行性転移,リンパ行性進展がある.切除可能な病期の胆嚢癌に限れば,肝内直接浸潤およびグリソン鞘浸潤が主要な肝内進展様式であり,グリソン鞘浸潤はグリソン鞘内のリンパ行性進展によって起こる.肝内進展に対しては肝切除範囲にかかわらず癌遺残の無いR0手術を行うことが肝要であり,肝切離マージンを確保した胆嚢床周囲の肝実質切除が基本である.肝葉切除以上の肝切除は,R0手術が可能な症例に限定して実施されるべきである.リンパ節郭清範囲に関しては,上膵頭後部リンパ節転移が陽性であっても根治手術により長期生存する症例が存在し,上膵頭後部リンパ節転移のみを根拠として根治手術の適応から除外するべきではない.肝葉切除以上の肝膵同時切除は限られた少数の局所進行胆嚢癌に対して生存に寄与するが,在院死亡率は高く,手術適応は慎重に判断すべきである.進行胆嚢癌に対する拡大手術は,その安全性確保を考慮すれば,ハイボリュームセンターで実施すべきであろう.進行胆嚢癌の治療は,化学療法の進歩に伴い集学的治療法の確立を目指す時代に入っている.

キーワード
胆嚢癌, 外科治療, 肝切除, リンパ節郭清, 化学療法


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