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日外会誌. 115(4): 190-194, 2014


特集

胆道癌外科治療の現況

4.中下部胆管癌の外科治療の現況―特に胆管の肝側・十二指腸側切除範囲について―

横浜市立大学 消化器·腫瘍外科学

遠藤 格 , 松山 隆生 , 森 隆太郎 , 谷口 浩一 , 熊本 宜文 , 武田 和永

I.内容要旨
胆管癌の予後規定因子にはリンパ節転移の有無,膵·血管浸潤の有無などと並び切除断端癌陽性も挙げられている.断端癌陰性すなわちR0切除を達成するためには術前診断が重要なことはいうまでもない.術前診断に加えて,多くの外科医が術中迅速診断を行ってR0切除を目指しているが,未だ100%のR0切除率は達成が難しいのが現状である.その理由として,胆管癌の特異な進展様式があげられる.従来から結節浸潤型の腫瘍は漿膜下層が先進部になることが多いのに対し,乳頭型では粘膜を置換するように進展するいわゆる表層拡大によって粘膜層が癌先進部になることが多い.表層拡大によって胆管断端が陽性となっても遠隔成績に影響を及ぼさないとする意見もあるが,5年以上経過すると再発するという報告もみられる.中部胆管に主座を有する腫瘍の特徴として,約半数の症例が肝門部胆管まで水平進展し,7割の症例が下部胆管まで水平進展している.すなわち,R0切除を極めるのであれば,中部胆管癌の多くはHPDを要することとなる.一方,少数例ではあるが肝門部胆管切除のみで長期生存が得られることもある.患者の臓器予備能や他の予後因子を十分把握し,バランスのとれた手術術式を選択すべきである.

キーワード
中下部胆管癌, 術中迅速診断, 肝膵同時切除, HPD, 肝門部胆管切除


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