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日外会誌. 114(5): 256-260, 2013


特集

外科医のためのKampo EBM UP TO DATE

7.茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の肝庇護作用に関する基礎的·臨床的研究―特に大量肝切除前投与の有用性について―

名古屋大学 腫瘍外科

横山 幸浩 , 國料 俊男 , 河合 清貴 , 水谷 哲史 , 渡辺 真哉 , 梛野 正人

I.内容要旨
大量肝切除術後には,肝細胞レベルでの胆汁鬱滞,高度な炎症反応,過剰な活性酸素種(ROS)の産生などにより肝障害がもたらされる.肝切除後肝障害は重度になると術後肝不全へと続き重篤な合併症となる.より安全に大量肝切除術を施行するために,術前あるいは術中·術後に投与して肝障害をできるだけ抑制するような肝庇護剤の存在が望まれるが,現在まで臨床の現場で有効と評価される薬剤はほとんどない.
漢方製剤である茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)には利胆作用,抗炎症作用,抗酸化ストレス作用などがあることが知られており,大量肝切除術時に有効な薬剤となる可能性がある( 図1).大量肝切除術における術前茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)投与の有用性を示した基礎的研究は発表されているが1) ,これが真の臨床で有効かどうかを評価するためには,大規模な二重盲検試験が必要であるが,いまだそのような試みはなされていない.本稿では,これまでわかってきている茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)の肝庇護作用についての基礎的,臨床的研究結果を紹介するとともに,本薬剤の大量肝切除術への適応拡大の可能性について論じたい.

キーワード
肝虚血再潅流, 活性酸素, 抗酸化ストレス, 大量肝切除術


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