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日外会誌. 111(5): 284-287, 2010


特集

小児臓器移植の現況

3.肺移植

京都大学大学院 医学研究科器官外科学講座呼吸器外科

伊達 洋至

I.内容要旨
日本においては,脳死ドナーの数が極めて限られている上に,年齢は15歳以上という年齢制限がある.したがって,小児患者には,脳死肺移植は非現実的であり,生体肺移植が現時点では唯一の手段である.日本では,これまでに19人の16歳以下の小児に対する肺移植実施例があるが,全例が生体肺移植であった.主な適応疾患は,特発性肺動脈性肺高血圧症,閉塞性細気管支炎である.生体肺移植では通常二人の健康なドナーが必要であるが,体格の小さい小児には,一人ドナーからの片側生体肺移植も可能である.成長期にある小児への生体肺移植後は,経時的に肺活量は増加する.自験例14例では,13例(93%)が最高9年まで生存中である.QOLの改善も著明であった.生体肺移植が小児患者に有用であることが明らかとなったが,生体ドナーが見つからない小児患者のために,2010年7月からの新しい臓器移植法の実施が待たれる.

キーワード
生体肺移植, 脳死肺移植, ドナー, レシピエント


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