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日外会誌. 111(2): 75-78, 2010


特集

動脈閉塞症に対する手術 vs 血管内治療:治療成績からみた選択基準

2.頸動脈病変

1) 神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科
2) 先端医療センター 脳血管内治療科

坂井 信幸1) , 坂井 千秋2)

I.内容要旨
頸動脈狭窄症は頸部の総頸動脈から内頸動脈近位部がアテローム血栓症により狭窄を呈する疾患で,脳梗塞の原因の1つとして重要な疾患である.発症機序は血行力学的機序よりも,粥状動脈硬化病変の破綻や狭窄部位に形成された血栓が,遠位の脳動脈や眼動脈に流れる動脈源性塞栓症(artery to artery embolism)が主体である.脳虚血症状を呈しその改善を目的とする急性期治療を除けば,本症に対する治療の目的は頸動脈狭窄症に起因する虚血性脳血管障害の発症を予防することである.高度狭窄を呈すれば血行再建が必要で,北米·欧州で行われた大規模臨床試験で内科治療に対して有意差をもって脳卒中予防効果を示すことが証明された頸動脈内膜摘除術carotid endarterectomy(CEA)をまず考慮しなければならず,AHAや我が国のガイドラインでは,症候性50%以上,無症候性60%以上の高度頸動脈狭窄症に対して,一定の条件下にCEAを行うことが推奨されている.近年,カテーテルインターベンションの技術により狭窄した頸動脈を拡張する頸動脈ステント留置術(carotid artery stenting,以下CAS)が導入された.局所麻酔下で行えるため低侵襲であり急速に発展をとげた.本邦でも2008年に保険収載を果したが,適応は「外科治療が困難なもの」「総頸動脈または内頸動脈に,症候性50%以上,無症候性80%以上の狭窄病変を有するもの」となっている.機器器材の改良と技術と経験の蓄積により,さらに発展することが期待されている.

キーワード
頸動脈狭窄症, 頸動脈内膜剥離術, 頸動脈ステント留置術


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