[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (950KB) [会員限定]

日外会誌. 109(5): 249-255, 2008


特集

消化管再建術の現状と将来―最良の再建術は何か―

2.頸部食道癌切除後再建術

近畿大学医学部 外科学講座

安田 卓司 , 今本 治彦 , 塩崎 均

I.内容要旨
頸部食道癌手術では嚥下および発声機能の大きな障害または喪失を伴う.音声再建術に関しては未だ標準術式として確立されていないのが現状である.近年は根治あるいは術前化学放射線療法により喉頭温存が図られつつあり,嚥下機能を考慮して消化管再建法を選択する必要がある.
再建臓器としては胃,小腸,結腸,筋皮弁があるが,筋皮弁は消化管が使えない時に限り,通常は前3者から選択される.胃は全食道再建が必要の際には簡便である.小腸は支配血管が明確な小ユニットの連結臓器で遊離移植に適している.ただ有茎による全食道再建は距離的に困難である.結腸は直線的で回腸も含めれば長さの点では最も有利である.ただボリュームが大きい欠点がある.
さて再建の実際であるが,喉頭温存の場合には,再建に供する空間が狭いことと喉頭の挙上運動を妨げないことに注意が必要である.故にボリュームの点で結腸との直接吻合は不適である.また,胃管単独再建は長さに余裕がなく喉頭挙上を妨げる可能性があるため避ける方がよい.以上より遊離移植では空腸が,全食道再建では胃管+遊離空腸,胃切後では回結腸再建が望ましい.
喉頭切除の場合には再建臓器のボリュームや誤嚥は考慮する必要はないが嚥下運動や逆流防止には工夫を払うべきと考える.前者に関しては舌骨上筋群温存による嚥下第一期の機能温存を図り,咽頭側は舌骨を温存して甲状軟骨上縁で切離している.後者に関して全食道再建では胃管+遊離空腸,胃切後では回結腸再建を原則としている.遊離移植では空腸,結腸いずれも可能だが感染や採取部位の吻合の簡便性から空腸を選択している.

キーワード
頸部食道癌, 遊離空腸, 胃管, 喉頭温存, マイクロサージェリー


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。