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日外会誌. 109(3): 163-166, 2008


外科学会会員のための企画

外科医療における裁判外紛争処理(ADR)

裁判外紛争処理の現状とその問題点

早稲田大学 法務研究科·教授

和田 仁孝

I.内容要旨
訴訟は,医療側,患者側のいずれにとっても,そのニーズに応答的な解決手段といえないだけでなく,様々な形で医療の現場に否定的な影響を及ぼしている.不確定性が顕著でかつ感情的なコンフリクトが強い医療事故紛争の特性に適した裁判外紛争解決手段(ADR)の構築は,いまや喫緊の課題といってよい.ADRについては,社会背景の相違から,海外とわが国では考え方が異なっており,それが医療事故ADRをめぐる議論にも反映している.
本稿では,そうした背景にも注意を払いつつ,現在進行している医療事故ADRに関する動きを概観し,その整備の方向性と,課題について検討する.具体的には,ADRの一モデルであるメディエーション(対話促進による合意形成)の院内初期対応への応用を目指す院内医療メディエーターの普及,第三者ADR機関の二つのモデルと現況を踏まえて,その連携による統合的医療事故紛争処理システムの方向を示唆していく.また,課題として,保険制度のあり方,原因究明機能との接合などの問題についても言及する.
克服すべき課題は多いものの,萎縮医療,医療崩壊を防ぐために,伝統的司法に代わる新たなシステムの構築へ向けて,多様な試みを連携させつつ促進することが必要と思われる.

キーワード
ADR, 医療紛争, メディエーション


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